2023 年 60 巻 5 号 p. 351-355
【背景】保険診療下で進行固形腫瘍に対して包括的ゲノムプロファイリング検査(CGP検査)が実施できるようになり約3年が経過した.がんゲノム情報管理センター(C-CAT: Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics)では,CGP検査で得られたがんゲノムデータを集約し,国内人口に最適なデータベースを構築している.我々は,小児固形がん患者に対する分子標的薬へのアクセス状況について検討した.【方法】C-CAT利活用検索ポータルを用いて,2019年6月1日~2022年4月4日の期間にCGP検査を受けた0~15歳の患者データより,その後分子標的薬による治療を受けた患者のデータを抽出し,それら薬剤へのアクセシビリティを評価した.【結果】合計687人(中枢神経腫瘍288人,非中枢神経腫瘍399人)の患者からのデータが収集可能であり,うち少なくとも1つ以上の分子標的薬の推奨があった患者は352(51.3%)人であった.治験や遺伝子変異に基づいた分子標的薬にアクセスできた患者は40人(5.8%)だった.4人は保険診療内,8人は治験,2人は患者申出療養,26人が適応外使用で薬剤が使用されていた.【結語】CGP検査を受けた小児固形腫瘍患者のごく少数でしか標的治療を受けておらず,主な到達経路は適応外使用であった.これらの結果は,小児がん患者に対する標的治療薬へのアクセスをマルチステークホルダーのパートナーシップによって改善することの重要性を示している.