日本小児血液・がん学会雑誌
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女性医師活躍支援委員会:特別企画シンポジウム
小児・AYA世代のがん対策のための研究―国際共同研究と地域での取り組み―
中田 佳世
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2023 年 60 巻 5 号 p. 346-350

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抄録

小児,AYA(Adolescent and Young Adult)世代におけるがんは,希少かつ多様で,その実態,患者のニーズの把握は十分ではなく,現状では科学的根拠に基づくがん対策ができていない.著者は,国内外のがん登録および臨床研究データを分析することにより,小児・AYA世代のがんの罹患率・生存率などの基礎的な統計値を算出することや,小児がんの患者家族のニーズを調査するなどの研究を行っている.本稿では,これらの研究について,その経緯や留学経験も含め紹介する.

2013年より大阪国際がんセンターがん対策センターに所属し,大阪府におけるAYA世代の白血病・リンパ腫の診療実態調査などを行った.2015年にロンドン大学に留学し,日英の小児がんの罹患・生存率を比較した.また,Wilms腫瘍について,日英の臨床研究データを後方視的に解析し,両国の患者の特徴や生存率,診療体制を比較した.2018年7月,国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer, IARC)に短期留学し,国際小児がん罹患第3版(International Incidence of Childhood Cancer, volume 3, IICC-3)のデータを分析し,小児腎腫瘍の罹患の国際比較を行った.2020年には,大阪府がん登録のデータを分析し,小児とAYA世代の白血病の生存率の長期推移についてまとめた.2018年から2021年に大阪府内の9施設の協力を得て,大阪府の小児がん患者家族ニーズ調査を実施し,現在は近畿ブロックに対象地域を拡大している.

研究を志す若い先生方のご参考になれば幸いである.

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