2024 年 61 巻 1 号 p. 37-42
小児がんの治療において,治癒を目指すことはもちろんであるが,晩期障害の少ない治療法の開発が非常に重要である.近年,腫瘍溶解性ウイルス療法(oncolytic virotherapy; OV)が新規治療の一つとして有望視されている.世界中で様々な種類のOVが開発されているが,共通するコンセプトは,正常細胞には可能な限り悪影響を及ぼさないこと,腫瘍細胞にのみ感染し,腫瘍細胞内で増殖したウイルスが隣接する腫瘍細胞に次々に伝播して抗腫瘍効果を示すことである.またウイルスによる直接的殺細胞効果だけでなく,OVが腫瘍微小環境を免疫学的に「cold」から「hot」な状態に変化させることによる免疫賦活作用にも期待でき,最近ではむしろ後者の抗腫瘍効果が注目されている.2021年6月には,Teserpaturev(Delytact; G47Δ)が,悪性神経膠腫を対象としたウイルス療法として本邦で初めて承認されたのは記憶に新しい.我々はアデノウイルスの遺伝子を改変し,小児がんの中で難治とされるPAX3::FOXO1陽性の横紋筋肉腫やラブドイド腫瘍に対するOV開発を行ってきた.本講演では,まずOVの治療開発の歴史から最近の研究,臨床応用に至るまで,OVの全般的な潜在的な魅力を概説する.その後小児がんに対するOVについて,その現状と今後の展望を紹介する.