小児がん長期フォローアップの目的は,QOLの保たれた長期生存のための晩期合併症の予防,早期発見,適切な管理であり,これらの各々について本邦でも独自のエビデンス創出が必要である.この目的のもとに現在がん対策推進総合研究事業の一環として,通称「長期フォローアップ松本班」による全国規模の長期フォローアップ体制の構築計画が進行中である.この枠組みにおいて,データセンターは情報インフラの整備について主要な役割を担っている.
長期フォローアップ松本班では,医師と小児がん経験者(CCS)からデータを収集する双方向性データベースを採用する予定である.また,予測モデルの構築を念頭にデータを収集することで,のちにリスクを想定して先手を打つ先制医療(Preemptive Medicine)としての長期フォローアップが実施できるようになり,さらに臨床情報とゲノムデータの連携によって,CCSの個別リスクに応じたPrecision Survivorshipも可能になると考えている.また,長期フォローアップは治療終了後に始まるのではなく小児がん発症時にがん登録で患者の存在を把握しておくことが重要であり,これによってLoss to follow-upを減らすことができる可能性がある.
本稿では長期フォローアップ松本班における情報インフラ整備の進捗,その活動の背景にある戦略や,将来的な国際共同などに関する展望について述べる.
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