日本小児血液・がん学会雑誌
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日本放射線腫瘍学会/日本小児血液・がん学会合同シンポジウム:緩和的放射線治療の有効性を知ろう―成人の緩和的放射線治療のエビデンスから学ぶ
脳転移に対する放射線治療医の考え方
大久保 悠
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2024 年 61 巻 1 号 p. 31-36

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抄録

成人の転移性脳腫瘍に対する放射線治療医の考え方を概説する.1954年にChaoらが脳転移に対する全脳照射の有用性を報告して以来,全脳照射は症状緩和の標準的な治療法のひとつとされてきた.また線量を集中的に照射する定位放射線照射(定位照射)が開発され,現在では少数個の脳転移に対しては局所制御を目的とした定位照射も標準治療のひとつとなっている.従来は5–10個といった多数の脳転移病変に対しては主に定位照射専用の治療装置であるガンマナイフを用いた治療が行われていたが,最近では技術開発により通常のリニアックでも容易に複数個の脳転移病変に対する定位照射が行えるようになってきており,今後はさらに脳転移治療における定位照射の役割が増してくると考えられる.しかし定位照射後,早期に新規脳転移病変が出現する場合も多く,それを予防するため定位照射に全脳照射を組み合わせた治療も行われている.また全脳照射による認知機能障害を低減させるために,海馬の線量を下げた海馬回避全脳照射や,線量の最適化といった工夫も導入されてきている.一方で,どのような症例に全脳照射,定位照射,あるいはその組み合わせが最適なのかを判断する材料のひとつに予後予測法がある.しかし免疫チェックポイント阻害剤や新しい分子標的薬の登場によって治療の選択肢はますます複雑化しており,さらなる治療の最適化・個別化のためには,課題がまだ山積みである.

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