日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
乳幼児期に網膜芽細胞腫を発症した患児へ母親が病気の理解を促す方法と難しさ
永吉 美智枝東樹 京子高橋 衣瀧田 浩平秋山 政晴柳澤 隆昭田村 宏美佐藤 三由紀安藤 あゆみ
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2024 年 61 巻 1 号 p. 65-71

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抄録

本研究は,網膜芽細腫の患児へ母親が病気の理解を促す方法と難しさを明らかにすることを目的とした.研究デザインは質的記述的研究法を用い,治療中または経過観察中の3~7歳の網膜芽細胞腫の患児の母親11名を対象に半構造化面接を行った.母親の年齢の中央値は42(29–45)歳であった.分析から理解を促す方法12カテゴリーと母親が感じる難しさ2カテゴリーが生成された.

診断後の時期に母親は【病気や治療について詳しく話さず,わかる内容に留める】が,患児の発達に応じ【眼の病気の診察や検査を受けるために受診すると説明する】と眼の病気と受診を関連づけていた.【眼の病気や経過と関連づけて治療の理由を説明する】きっかけには眼球摘出があった.また,【“がん”という言葉を使わず,視力低下や生命に関わる病気であったと説明する】様相がみられた.“がん”や義眼,視覚障害の段階的な説明のタイミングを重視し,慎重に言葉を選ぶ一方で,死という言葉を伝えざるを得ない状況に直面していた.遺伝など成人期を見据えた説明を考える母親がおり,【子どもへの対応のなかで,ショックや罪悪感を抱く】状況もみられた.

患児への病気理解の促しには,診断後の乳幼児期から母親の心理に配慮したタイムリーかつ発達に応じた計画的な説明と,診療科間や多職種が連携した支援体制の構築が求められる.

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© 2024 日本小児血液・がん学会
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