日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
網膜芽細胞腫をもつ患児へ眼と見え方の理解を促す方法に関する質的記述的研究
永吉 美智枝東樹 京子高橋 衣瀧田 浩平秋山 政晴柳澤 隆昭田村 宏美佐藤 三由紀安藤 あゆみ
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2024 年 61 巻 1 号 p. 72-79

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抄録

本研究の目的は,網膜芽細胞腫の患児へ眼と見え方の理解を促す方法を明らかにすることである.質的記述的研究デザインを用い,治療中または経過観察中の3~7歳の患児の母親11名を対象に半構造化面接を実施した.本研究は研究者の所属施設の倫理委員会の承認を得た.分析の過程で母親が捉える患児の眼と見え方の理解が26サブカテゴリー,10カテゴリー,患児に眼と見え方の理解を促す方法は23サブカテゴリー,13カテゴリーが生成された.患児には【見え方に違和感を感じていない】様子と,【見えにくさと左右の見え方の違いに気づき表現する】,【見えにくさに自分で対処する】様子がみられた.さらに,友達と自分の眼を比較し【自分と他者の視覚や容姿の違いを意識する】,【自分の眼に対する疑問をもち健常な眼を羨やむ】状況がみられた.母親は,患児の行動を視覚と関連づけて観察しながら,【左右の眼と見え方の違いとより見える方法の説明】を行い,見えない部分への意識と事故予防など行動上の注意を繰り返し教える状況があった.また,【残存している眼球と視力の保護の促し】,【視力を弱点と感じずにできることへの気づきの促し】をすることがあった.視覚の評価に基づく幼児期の視覚的認知発達に関する助言と,必要に応じた視覚障害の専門家と連携した発達支援を開始する必要性が示唆された.

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© 2024 日本小児血液・がん学会
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