肝芽腫の治療予後を左右する重要な因子の一つが肺転移である.我々は2008年から積極的に肺転移巣の切除を行う方針とし,現在までに22例に対して肺切除を施行した.
原発巣が通常の肝切除で対応できる場合は,肺転移があることによる原発巣術式の変更はない.一方,PRETEXT IV,高度脈管浸潤,残肝再発などでは原発巣の完全切除に肝移植を考慮しなければならない.現在までに我々は,経過中に肺転移を有した8例の肝移植症例を経験した.4例がプライマリー肝移植,4例が肝切除後の再発に対する肝移植であった.8例中5例が救命できなかった.その原因は,すべて肺および肺外転移のコントロール不可であった.
単純に比較することはできないが,肝移植を行っていない肺転移を伴う肝切除症例18例中14例が救命されたことと比べ,移植症例での転移・再発コントロールの困難さを感じた.肺転移症例の肝移植の成績についてはいくつかの報告があるが,まだ結論には至っていない.
上記の経験から,我々の方針は,何らかの工夫をして肝移植が回避できる場合は安全性を考慮の上,いわゆる高難度肝切除を行う.経験例を挙げると,門脈本幹の腫瘍栓がある右葉腫瘍に対してはmeso-Rexシャントを用いた右葉切除,残存させる肝静脈に腫瘍が接する場合はICG蛍光法を用いて静脈壁から腫瘍を剥離・静脈温存して肝切除,などである.