2024 年 61 巻 3 号 p. 234-237
小児がんは希少疾患であることや,少子化による患者数の減少が想定されるため,質の高い医療を提供するためには,医療資源の集約化が必要である.一方,地域の医療事情を踏まえた均てん化に関する議論も同じく重要である.小児がん患者では両親も若く,きょうだいがいる場合も多く,経済的あるいは精神的な理由により,遠方での治療を受けることが困難なために,居住地域での治療を望む声は大きい.小児がん医療の集約化が進むことにより,限られた拠点病院へ患者が過度に集中した場合には,地域の小児がん診療病院が減少,拠点病院でこそ実施可能な高度な医療の低下,患者間の医療格差の拡大,地域での診療機会の減少による専門医を目指す若手医師の減少等が懸念される.患者自身の集約化とは別に,拠点病院と連携病院の協力体制強化のために医療資源を集約化することは重要である.拠点病院と連携病院をオンラインで結ぶことにより患者さんの治療に必要な情報交換や中央病理診断や画像診断,遠隔診療を利用した長期フォローアップシステムの構築等に医療資源を重点的に分配することにより地域病院を守り,結果として日本全体としての小児がん診療レベルの向上や維持につながるのではないだろうか.