2024 年 61 巻 5 号 p. 307-312
移植後は免疫抑制状態のほか慢性GVHDや二次がんといった晩期合併症リスクが長期に続き,移植後10年時点で晩期合併症の発症割合は6割と報告される.患者アンケートでも退院後の相談外来に対するニーズが示され,2012年には移植後患者指導管理料として移植後長期フォローアップ(LTFU)外来が保険収載された.日本造血・免疫細胞療法学会(JSTCT)によるLTFU看護師研修の累積受講者数は2,000人を超え,また本邦の移植後LTFUガイドライン発刊などの整備が進められた.しかし現実的には,急性期診療で忙しい移植担当医療スタッフが手探りでLTFU外来を運用しているのが実情と考え,国立がん研究センター研究開発費福田班では移植後LTFU外来の現状とニーズを把握することを目的に,2018年に全国調査を行った(回答施設数188施設:成人144/小児48,BBMT.2020).移植後LTFU外来開設率や未開設理由のほか,移植後の成人移行がルーチンでは行われていない現状や,全国共通のLTFU問診票や患者指導リーフレットへのニーズが調査から明らかになった.これらの結果を受け,福田班ではLTFU診療の標準化,質の向上,担当者の負担減を目的としたLTFU医療者活用ツール全国版の構築を進めてきた.2021年からは移植後小児成人移行をサポートするツール構築に取り組んでいる.成人診療科からみた移植後長期フォローアップの現状と展望についてのべる.