2024 年 61 巻 5 号 p. 313-317
遺伝性骨髄不全症候群(IBMFS)は,造血細胞の増殖・分化の障害を特徴とし,様々な外表奇形を呈する疾患群である.骨髄異形成症候群や白血病,そして一部の疾患では固形腫瘍の発症素因を有する.Fanconi貧血,先天性角化不全症,Diamond-Blackfan貧血,Shwachman-Diamond症候群が代表的な疾患であり,小児期の骨髄不全症候群の10–20%を占める.IBMFSを再生不良性貧血などの後天性骨髄不全と鑑別することは適切な治療法を選択する上で極めて重要である.IBMFSの診断は血液学的検査,家族歴や特異的な外表奇形の有無,疾患特異的なスクリーニング検査によってなされる.遺伝子解析技術の発展により多くの原因遺伝子が同定されており,現在は包括的な遺伝子解析を用いることでIBMFSを診断することが可能になっている.同種造血幹細胞移植は,IBMFS患者の骨髄機能不全に対処するための有望な治療選択肢である.しかし,造血幹細胞移植は非血液学的病態を改善せず,遺伝性がん素因による二次悪性腫瘍のリスクを増加させる可能性があることから,移植ドナーの選択と移植前処置の選択には留意する.さらに,IBMFS患者に対する適切なカウンセリング,サーベイランス,治療を行うために造血幹細胞移植の晩期障害と年齢によるIBMFSの合併症を注意深く観察する必要がある.