日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム8:血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形に対する新しい治療戦略
血管腫・脈管奇形の遺伝子異常
石川 耕資佐々木 雄輝佐々木 了
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2024 年 61 巻 5 号 p. 339-345

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抄録

近年の次世代シーケンス技術の発展に伴い,比較的稀な疾患である脈管異常の原因遺伝子が次々と判明してきた.脈管性腫瘍と脈管奇形に大別される脈管異常は,RAS/MAPKシグナル伝達経路やPI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路上の遺伝子異常が原因とされ,それぞれRASopathies,PIKopathiesと呼ばれる.原因遺伝子として,先天性血管腫におけるGNAQGNA11,房状血管腫におけるGNA14,静脈奇形におけるTEKTIE2),毛細血管奇形におけるGNAQ,リンパ管奇形におけるPIK3CA,動静脈奇形におけるMAP2K1等の体細胞活性化変異が報告されている.我々はクリッペル・トレノネー症候群症例のホルマリン固定パラフィン包埋組織標本を用いて次世代シーケンス解析を行い,86%の症例にPIK3CAミスセンス変異を検出した.脈管異常において癌と共通する原因遺伝子が明らかとなり,抗癌薬の既存薬再開発による適用拡大がなされつつある.

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© 2024 日本小児血液・がん学会
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