日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム7:小児血栓止血診療の課題がどこまで解明され,どのように今後展開されていくのか?
早発型遺伝性血栓症の遺伝学的・臨床的特徴
江上 直樹
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2024 年 61 巻 5 号 p. 334-338

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抄録

小児血栓症における遺伝性素因の重要性に関する報告が増えているが,その詳細は未だ明らかでない.20歳以下で発症する遺伝性素因の影響の強い血栓症を「早発型遺伝性血栓症(early-onset thrombophilia, EOT)」と捉え,遺伝子検査と患者情報の集積を行った.追加で文献検索を行い,プロテインC(PC)欠乏症55名,プロテインS(PS)欠乏症29名,アンチトロンビン(AT)欠乏症18名の計101名(1名はPC/PS欠乏症を共に持つ)から成る日本人EOTレジストリを作成,解析した.抗凝固活性値は,年齢に応じた基準値を用いることでEOTを高感度に検出するが,特異度は低くEOTの診断には遺伝子検査が必要であった.新生児期から乳児期は電撃性紫斑や頭蓋内出血/梗塞で発症するPC欠乏症が多く,年齢と共にPS/AT欠乏症が増加した.年代と遺伝性血栓性素因に応じた血栓症予防と治療が必要である.PROC両アレル変異を持つ新生児PC欠乏症患者は視力障害など重篤な神経学的後遺症を来した.早期診断,胎児治療から出生後治療に至る新たな管理戦略の構築が必要である.EOT患者の両親の遺伝子検査(32家系)を行い,de novo変異はPC欠乏症の1家系のみだった.3家系(PC欠乏症2家系,AT欠乏症1家系)で周産期に母児が同時に血栓症を発症しており,母児を血栓症から守るための遺伝性血栓性素因スクリーニングの可能性が示された.

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