2024 年 61 巻 5 号 p. 351-359
播種性血管内凝固(DIC)には原因となる基礎疾患が存在し,持続する凝固の活性化状態により微小血管障害性溶血性貧血が生ずる病態である.凝固/線溶関連因子の消費性低下を来し血小板低下も生じるため,治療介入を速やかに行わなければ致死的となる.基礎疾患により線溶能の程度が異なり,例えば急性前骨髄球性白血病では線溶能の亢進により凝固能を上回るため出血症状を呈し(線溶亢進型DIC),敗血症では線溶能の抑制により凝固能が相対的に優位となり微小血栓が多発し臓器症状が主体となる(線溶抑制型DIC).凝固/線溶能のバランスを正確に評価することは実臨床ではなかなか困難であり,これまでも複数のDIC診断基準が存在してきた.本邦で最も頻用されてきた旧厚生省DIC診断基準は,特異性は十分であるが早期DICの診断感度が不十分であり急性期DIC診断基準が提唱された.国際血栓止血学会のDIC診断基準も早期診断に課題があり,日本血栓止血学会DIC診断基準2017年版が新たに発表された.新生児では新生児DIC診断・治療指針2016年版が用いられる.治療は基礎疾患の治療が最優先であるが,DIC治療では凝固/線溶能のバランスを正確に把握しないと不適切な治療に繋がるため,それらバランスを常に意識することが重要である.