2024 年 61 巻 5 号 p. 360-365
小児がんの医療において,がんや検査・処置・治療による肉体的・精神的・心理的な苦痛や不利益を軽減・予防して,患者や家族の生活の質を改善する支持医療はきわめて重要である.支持医療は治療介入のみならず,それを実践するための多職種からなる医療体制の構築,教育や啓発等の包括的な取り組みである.
しかし小児では,がんの支持医療におけるエビデンスは成人と比べて乏しく,国内では小児がんの支持医療に特化した臨床研究が十分に行われていない.日本小児がん研究グループの支持療法委員会で行った支持医療の現状調査では,エビデンスに基づいた支持医療と各施設の慣習に基づくと思われる支持医療が混在し,過度に濃厚な支持医療が行われている分野もあった.その一方で一部の支持医療は,医療現場のマンパワー不足を反映して脆弱な体制で行われており,多診療科・多職種の連携が不十分であった.
本稿では小児がん患者に対する基本的な支持医療である感染対策と化学療法による悪心嘔吐について,現在のエビデンスを整理して示す.また,検査・処置時の鎮静・鎮痛,口腔ケア,栄養管理を例に,医師のみならず多診療科・多職種が協力して,支持医療を提供する重要性について述べる.最後に小児がん支持医療におけるエビデンス創出の方策について言及する.