2024 年 61 巻 5 号 p. 366-372
小児がんの治療成績向上のためには,臨床試験における治療の科学的妥当性の検証が重要である.わが国では,日本小児がん研究グループ(JCCG)が中心となり後期相試験を実施し,標準治療の確立が進められてきたが,小児がんの希少性から国内の症例数では検証的な臨床試験が実施できないことも多い.また,早期相試験については小児薬剤開発推進が法制化されている欧米に比べて十分な開発体制が整備されておらず,ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスが課題となっている.これらの問題を解決するための方法のひとつとして,国際共同臨床試験への参画があげられる.しかし,国際共同臨床試験実施には様々な課題が存在する.これは各国における標準治療が異なるといった医学的要因だけでなく,規制面での違い,研究資金や人的リソースの制約もあげられる.またICH-GCPやGCP省令に基づく臨床試験の経験が求められ,参加施設も限定されることが多いが,一方で患者集積とのバランスを考慮しなくてはならない.本稿では,これまでに小児がんを対象として行われたアカデミア主体の国際共同臨床試験実施体制をまとめるとともに,KMT2A遺伝子再構成陽性乳児白血病に対する国際共同臨床試験Interfant-21参画準備について説明する.さらに海外の臨床研究支援の仕組みを参考にしつつ,国際共同試験への参画を円滑にする枠組みや小児がん臨床試験の実施支援体制の今後の展望について考える.