日本小児血液・がん学会雑誌
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二学会合同シンポジウム:病気とともに『生きる』子どもと家族を支える緩和ケア
「意思決定支援」をめぐる問いと実践
笹月 桃子
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2024 年 61 巻 5 号 p. 376-384

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抄録

近年,「意思決定支援」がこれほどまでに謳われる背景には,医療における自己決定概念の前景化,社会から医療への要請の複雑化,医療者の苦悩など,いくつかの要因があるであろう.しかし元来,私たちは,生まれてくることも,死にゆくことも,病を得ることも,自ら選べない.それでは医療において「意思」を「決定」するとは何を決めることなのであろうか.個人の人生における尊厳感の保持や自分らしさの実現のすべてを医療は担うことができるのであろうか.尊厳,最善の利益,自律尊重,苦痛といった大きな言葉を通じて,私たちは何に合意しているのであろうか.それを私たちはコントロールできるのであろうか.本稿では,成人領域での議論を俯瞰しながら,医療現場における子どもの意思決定のプロセスを細かにたどり,曖昧さを含んだままの概念をそのまま飲み込むのではなく,目の前に在る子どものいのちを見つめ,自らとは異なる他者として,そのいのちに畏れを抱き,底上げ的に議論を重ねる重要性を共有する.その先に,既存の価値から見下ろし,品定めするのではない,どのようないのちも等しく尊ばれる社会の醸成が叶うことを期待する.

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