2024 年 61 巻 5 号 p. 397-400
血友病Aは,X連鎖潜性の代表的な先天性出血性疾患であり,国内に存在する5,000人以上の患者のほとんどが男性である.一方,正常アレルと病的アレルのヘテロ接合である女性は,出血症状を呈さない「保因者女性」として長らく扱われてきた.しかしながら,近年「保因者女性」の出血症状の実態が注目されており,その中には凝固因子活性の低値から女性血友病と呼称される患者が存在する.今回我々は,エミシズマブによる管理を開始し,良好に出血症状を予防できているインヒビター非保有非重症女性血友病Aの一例を経験した.国内における女性血友病Aの症例報告は少なく,これまでは第VIII因子製剤のオンデマンド補充等が行われてきた.「保因者女性」については,無症候性保因者から女性血友病まで出血状況は幅広く,個々に合わせた管理が検討されるべきである.また,女性血友病Aに対するエミシズマブの使用報告は限られており,今後の症例の集積が課題である.