2024 年 61 巻 5 号 p. 406-409
アンチトロンビン(AT)欠乏症は遺伝性血栓性素因の一つである.AT欠乏症の小児について直接経口抗凝固薬(DOAC)の効果判定のエビデンスは不十分であり,DOACで血栓症の一次予防をした報告例は少ない.AT欠乏症の5世代にわたる家族例を経験した.患児は7歳,体重19.4 kg,AT活性51%であり,SERPINC1にスプライスバリアントが認められた.患児にリバーロキサバン15 mg/日の試験投与を行った.凝固波形解析において,投与前には短縮していた患児の凝固時間は,投与下では健常者と同等になり,最大凝固加速度は投与下に健常者よりも低下した.トロンビン生成試験において,投与前およびCOVID-19罹患時には亢進していた患児のトロンビン産生は,内服下では健常者に比べて抑制されていた.これにより,リバーロキサバンの投与量の参照になる情報が得られた.小児例の集積による至適投与法の確立が必要である.