日本小児血液・がん学会雑誌
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JSPHO&JCCG特別企画 ジョイントシンポジウム:長期フォローアップの問題点と今後の展望
小児がん経験者の長期フォローアップに包括的スクリーニングを用いた経験
小澤 美和
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ジャーナル 認証あり

2025 年 62 巻 1 号 p. 1-5

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抄録

目的:小児がん経験者(CCS)の長期フォローアップにおける包括的な健康の質の評価,CCSの健康教育,これらをシステマティックに行う体制構築を行うこと.対象:①同意取得の時点で18歳以上の者 ②小児がん診断後10年以上かつ現病に対して5年以上無治療の者 ③治療サマリーを持っている者 方法:事前自己評価アンケート後,病院付属の予防医療センターにて半日,病院にて半日,臨床心理士による半日の評価を行う.後日,本人へ報告書を渡すと共に健康教育を行う.晩期合併症の有無は,modified CTCAE v4.0に準じた.結果:研究開始前の2010年12月から2015年12月に,担当医の裁量によって検査・診察が行われたCCS(一般的フォローアップ群)110人を対象群として,2016年2月から2019年9月までに『聖路加AYAコホート研究』に参加した(包括的スクリーニング群)58人の晩期合併症を比較した.Grade 1以上の晩期合併症の検出率は,包括スクリーニング群:一般的フォローアップ群=93.1:67.3(%).Grade 3以上の晩期合併症の出現率は2群間の頻度に差を認めなかった(p=0.157).臓器別に晩期合併症の検出頻度は,肺機能異常,認知機能異常,眼科的異常,歯の異常において包括的スクリーニング群での検出率が優位に高かった(p<0.001).さらに特筆すべきは,精神的合併症が治療強度とは関係なく検出されたことである.結語:肺機能異常,眼科的異常,歯の異常,認知機能異常,精神の異常の晩期合併症は見落とされやすい.

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