2025 年 62 巻 1 号 p. 14-19
2022年,日本小児血液・がん学会血小板委員会は,「小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン2022」を策定した.病名や病期の変更に加え,出血症状の評価に修正Buchanan出血重症度分類を導入した.血小板数だけでなく,出血症状,活動度や生活様式,医療機関へのアクセスなど多面的な評価に基づき,患者の健康に関連した生活の質(HRQoL)の向上を目指した治療介入を提案した.これまで以上に個別化した対応が求められ,鑑別診断のすすめ方に加え,治療選択の決定において血液専門医との連携が容易にできる体制も必要である.
セカンドライン治療に位置づけたTPO受容体作動薬,リツキシマブは,国内においては長らく小児ITPへの用法・用量の設定がなく,各施設の倫理指針などにそった導入の検討を余技なくされていたが,本ガイドラインも後押しとなり,今年4月に小児への適応拡大が認められた.サードライン以降の治療にはいずれも適応外であり,より安全で有効性の高い新薬の開発が求められている.新薬の標的分子として,脾臓由来チロシンキナーゼ,ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬,胎児性Fc受容体阻害薬などがあり,小児ITP診療においても今後の展開に期待したい.
いくかの課題に向き合いつつ,本ガイドラインの普及につとめ,臨床現場の選択がどのように変化したかを検証し,次期の改訂に反映させたいと考えている.