日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム8:血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形に対する新しい治療戦略
難治性血管腫・血管奇形に対するシロリムス療法
小関 道夫
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2025 年 62 巻 1 号 p. 20-24

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抄録

皮膚や軟部組織に異常な血管やリンパ管が発生する疾患群は血管腫・血管奇形(脈管異常)と呼ばれるが,小児血液腫瘍の診療の中では,乳児血管腫だけでなく,カサバッハ・メリット現象を伴う血管性腫瘍や,リンパ管疾患,静脈奇形,クリッペル・トレノネー症候群など難治な症例に出会うこともある.治療法は病変の大きさや症状により個別に決定され,小さな病変は経過観察や完全切除可能な場合は手術,硬化療法が選択肢となるが,切除困難な巨大病変など,難治例に対しては治療が確立されていない.近年の研究でPI3K/AKT/mTOR,RAS/MAPK/MEKシグナル伝達経路上の遺伝子異常が原因として特定され,病態との関連性が注目され,それをきっかけに新しい治療薬の開発が進んでいる.2024年1月には本邦でmTOR阻害剤であるシロリムスが承認された.病変の縮小や出血,疼痛などの軽減に有効とされているが,その薬理作用のみならず,使用方法や治療適応など,まだ十分にわかっていない面も多い.本総説では小児血液腫瘍の臨床現場において出会う難治性血管腫・血管奇形を紹介するとともに,シロリムスの治療適応や実際の治療についてまとめる.

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