2024 年 69 巻 1 号 p. 77-85
嚥下機能が低下し、嚥下障害に至るプロセスはさまざまであるが、嚥下障害の発症は低栄養や脱水を招きやすく、誤嚥性肺炎や死亡のリスクを高めるだけでなく、生活の質にも影響する。地域在住高齢者の嚥下障害の有病率は 5.5%~53.8% と報告されている。嚥下障害に対する対策は高齢化の進展する我が国において喫緊の課題であり、関連する要因の同定が必要である。
今回、嚥下障害に関わる要因を明らかにするために系統的レビューを実施した。地域在住者における嚥下障害との関連に関する研究において、これまでに検討された要因について網羅し、その結果をまとめた。文献の収集には、『PubMed』『Google Scholar』『医中誌 Web』を用いた。論文の選択基準は、①The 10-item Eating Assessment Tool ( EAT-10)を使用して嚥下機能を評価している、②対象集団が現在入院していない地域居住者で 18 歳以上である、③英語または日本語で執筆されている、④原著論文である、⑤分析疫学研究である、とした。
文献検索の結果、同定された 231 論文のうち、 11 編の論文を採用した。対象集団は全て高齢者であり、地域在住者の集団が 4 編、外来通院患者集団が 4 編、介護施設利用者集団が 2 編、介護施設居住者集団が 1 編であった。口腔や歯の状態、舌の筋力に関する項目は、 7 編の論文で関連が検討された。複数の論文で有意な関連が認められ、論文間で結果が一致した項目は、最大舌圧のみであった。全身の筋力や運動能力、生活の自立度、主観的健康観など、有意に関連が認められた項目もあったが、複数の論文で検証されていないため結論は出せない。今回の調査で採用した論文は、 11 編中 9 編が横断研究であった。検討した項目の多くは因果関係について言及できない。
今回、嚥下障害をスクリーニングする質問紙 EAT-10 を使用した論文を調査した。嚥下障害に関わる要因を同定するためのエビデンスは、まだ十分ではない。今後、質の高い研究を実施し、エビデンスを蓄積する必要がある。