四国公衆衛生学会雑誌
Online ISSN : 2759-8055
Print ISSN : 0286-2964
ISSN-L : 0286-2964
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 濵田 佳乃, 石元 里奈, 酒井 優衣, 山本 佳枝, 立仙 唯佳, 笹岡 晴香
    2026 年71 巻1 号 p. e1-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】目的は全般的な救急処置技術における養護教諭の自信と経験年数、経験頻度、学習経験との関係性を明らかにし、更に養護教諭の救急処置技術の自信の向上につながる取り組みや学習機会を明らかにすることである。

    【方法】対象者は、ある県の小中学校勤務の養護教諭280名である。調査項目は、養護教諭の経験年数、看護師免許及び経験の有無、救急処置技術における自信の程度・経験頻度、研修・講習の受講などであり、無記名自記式アンケートによる調査を行った。分析は、属性や経験および研修受講の有無と自信について、SPSSを使用して記述統計や差の検定を行った。自由記載は、内容分析により回答を意味の類似性に基づき単語、語句、文の発生頻度及び類似性のあるコードをまとめてカテゴリー化した。

    【結果】回収数は151名で、同意有102名であった。有効回答は102名であった。救急処置技術16項目において、経験年数と自信は、1項目に有意な関係があった。経験頻度と自信は、8項目で有意な関係があった。研修・講習の受講の有無と自信は、4項目に有意な関係があった。救急処置技術で困ったことについて、コード数が最も多かったサブカテゴリーは「重症度の判断」であった。必要だと思う研修・講習について、コード数が最も多かったサブカテゴリーは「定期的な研修」であった。

    【考察】救急処置技術における自信は経験を重ねることで向上させることができる。自信を持って救急処置を行うには、実際に様々な救急処置技術を経験することに加えて、定期的な研修・講習を重ねることが必要であると考えられた。

総説
  • コホート研究と症例対照研究のレビュー
    宮木 鉄平, 永井 将弘, 三宅 吉博, 田中 景子
    2026 年71 巻1 号 p. e2-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】最近のメタアナリシスで身体活動とパーキンソン病発症リスクとの予防的な関連が示された。しかしながら、先行研究の多くは総身体活動に焦点を当てており、身体活動のドメイン(例:余暇活動、職業活動など)や強度別(例:高強度、中強度など)といった多次元的な側面から関連を詳細に検討し、集約した報告は十分ではない。本研究では、様々な身体活動とパーキンソン病発症リスクとの関連に関する詳細な情報を収集するため、身体活動のドメイン、強度、および評価方法の違いに着目し、これらの関連を調べたコホート研究と症例対照研究の成果を収集し、関連についてのエビデンスを多角的にまとめた。

    【方法】医学文献データベース(PubMed)を使用した。検索用語として、(“Parkinson Disease”[MeSH Terms] OR “Parkinson’s disease”[Title/Abstract]) AND (“Motor Activity”[MeSH Terms] OR “Physical Activity”[Title/Abstract] OR “Exercise”[Title/Abstract] OR “Physical Exertion”[MeSH Terms]) AND (“Risk”[Title/Abstract] OR “Risk Factors”[MeSH Terms] OR “Incidence”[Title/Abstract] OR “Development”[Title/Abstract] OR “Onset”[Title/Abstract]) AND (“Cohort Studies”[MeSH Terms] OR “Prospective Studies”[MeSH Terms] OR “Case-Control Studies”[MeSH Terms]) AND (“Humans”[MeSH Terms]) AND (“English”[lang]) NOT (“Case Reports”[Publication Type] OR “Randomized Controlled Trial”[Publication Type] OR “Systematic Review”[Publication Type] OR “Review”[Publication Type])を用いた。タイトル、要約、本文をレビューし、曝露因子として身体活動に関する記述があること、パーキンソン病の罹患をアウトカムとし、オッズ比またはハザード比が示されているコホート研究と症例対照研究である英語原著論文を選択し、表に集約した。尚、一次予防に資する観察研究を対象とするため、介入研究は除外した。

    【結果】最終的に18編(コホート研究14編、症例対照研究4編)の論文を同定した。生活活動と運動の双方で活動量が多いほどパーキンソン病の発症リスク低下と関連することが複数の論文で認められた。男女間で関連に差がある論文も見られた。

    【結論】コホート研究の論文または症例対照研究の論文では、身体活動がパーキンソン病のリスク上昇と関連したものはなく、様々な身体活動はパーキンソン病のリスク低下と関連することが複数の論文で認められた。しかしながら、未だエビデンスは十分ではない。今後、日本人を含む諸外国の複数のコホート研究に基づくエビデンスの蓄積が必須である。

  • 観察疫学研究のレビュー
    福田 裕子, 田中 景子, 三宅 吉博
    2026 年71 巻1 号 p. e3-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】食事要因とうつ病リスクとの関連が注目されている。本研究では、抗酸化物質であるビタミンC、ビタミンE及びカロテノイド摂取に着目し、うつとの関連を調べた観察疫学研究成果を収集し、これらの関連に関するエビデンスをまとめた。

    【方法】医学文献データベース(PubMed)で、(“vitamin C” OR “vitamin E” OR carotene OR carotenoid) AND (intake OR consumption) AND (“depressive symptoms” OR depression) AND (cohort OR case-control OR cross-sectional) を用い、英文原著論文の観察的疫学研究を対象とした。本研究の目的に一致しない論文、原著論文でないもの、オッズ比または相対危険を算出していない論文を除外し、表にまとめた。

    【結果】90編の文献を抽出し、最終的にうつ症状をアウトカムとした観察研究17編を採択した。研究デザインは横断研究14編、コホート研究2編、症例対照研究1編であった。ビタミンCに関する研究8編中6編、ビタミンEに関する研究7編中3編、カロテノイドに関する研究9編では全ての研究で、摂取とうつ症状との間に負の関連が認められた。総抗酸化能に関する研究では、2編とも負の関連が認められた。

    【結論】抗酸化物質の摂取は、うつ症状の予防に寄与する可能性がある。日本人を対象とした研究は17編のうち2編の横断研究のみであったうえ、研究対象者が65歳以上と限られていた。日本人におけるコホート研究等のエビデンスの蓄積は必須である。グローバルにおいても、今後は抗酸化物質摂取だけでなく抗酸化物質相互の作用や、食事全体の抗酸化能を評価した指標を用いた疫学研究成果を蓄積する必要がある。

資料
  • 栗栖 美代子, 鳥居 順子, 入野 了士, 田中 美延里
    2026 年71 巻1 号 p. e4-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】愛媛県内の自治体非正規保健師を対象に調査を行い、その働き方の実態と課題を明らかにする。

    【方法】愛媛県内の市町に雇用されている非正規保健師を対象に無記名自記式質問紙調査を実施し、全項目について記述統計量を算出した。

    【結果】質問紙は122名に配布し91名から回収された。同意不備3名を除く88名を分析対象とした。年齢は60歳以上が43%であり、正規保健師経験を有する者は72%であった。就業形態はフルタイム以外が81%で、看護職以外の職種との兼業者もみられた。直接対人支援を中心に多様な業務を担っており、マネジメント業務に従事する者もいた。長期にわたり非正規として勤務する者もおり、業務内研修参加は35%であった。非正規として働く理由は資格活用や家庭との両立が多かったが、正規保健師等からの依頼を受けて就労する者も存在した。34%の者が仕事以外の活動として地域活動や奉仕活動を行っていた。

    【考察】保健師の人員確保の課題を抱える愛媛県市町にとって、非正規保健師は保健事業を支える貴重な人材となっていた。中でも熟練した「プラチナナース」の存在が大きいことが明らかになった。一方で、経験が待遇に反映されにくいという課題が示唆された。業務内研修参加は半数以下で、正規と同様の研修機会の提供が求められる。非正規を選択する背景には家庭との両立があり、自治体の需要と一致して相互に有益な関係となっている。兼業や地域活動から「プロボノワーカー」としての役割を果たす者もおり、非正規保健師の多様な生活背景が強みとなる可能性がある一方、人材マネジメントの課題を内包しており、個々の専門性を活かせる柔軟な体制づくりの必要性が示唆された。

  • 杉本 加代
    2026 年71 巻1 号 p. e5-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】骨髄バンクの新規ドナー登録者の97.7%の者は献血会場でドナー登録をしていること、大学生の献血理由で最も多いものは「自分の血液がだれかの役に立ってほしい」ことが報告されている。しかし、大学生の献血行動の実態と骨髄バンクに対する関心との関連は明らかになっていない。本研究は、大学生の献血経験と骨髄バンクに対する関心との関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】研究対象者は、A大学医学部の1~2年生350人である。調査項目は、年齢、性別、献血経験の有無、献血回数、初回献血年齢等および骨髄バンクに対する関心の程度、骨髄バンクへのドナー登録の有無等である。データ収集方法は、マイクロソフトフォームズによるオンライン調査で無記名とした。医学部医学科の対象者227名には、QRコードを記したアンケート調査への協力依頼文書を教務情報システムから配布し、同看護学科の対象者123名には、講義担当教員から承諾のあった授業時間内に、研究者がQRコードを記したアンケート調査への協力依頼文書を配布し口頭で説明を行った。調査は2024年7月4~26日に行った。分析にはエクセル統計Statcel5を使用し、有意水準は5%未満とした。

    【結果】回答者は114人(回収率32.6%)であり、有効回答数は112人であった(有効回答率98.2%)。年齢は19.1±1.5歳であった。骨髄バンクを知っている者81人(72.3%)のうち、骨髄バンクに対する関心の程度が最も高かった年齢は18歳であり、骨髄バンクに対する関心の程度は、献血経験あり群15人(18.5%)が献血経験なし群66人(81.5%)よりも高かったが、有意差はなかった。

    【結論】大学生の献血経験の有無と骨髄バンクに対する関心の程度には、有意な関連はなかった。骨髄バンクを知っている者のうち、骨髄バンクに対する関心の程度が最も高かった年齢は18歳であった。

  • 西山 智子, 西嶋 真理子
    2026 年71 巻1 号 p. e6-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,文献レビューを通じ,小規模自治体に勤務する保健師の活動特性と職場環境に起因する困難を抽出し,保健活動を行う上で直面する困難を明らかにすることを目的とする。

    【方法】医学中央雑誌Web版,CiNii Research,ハンドサーチにより文献を収集した。小規模自治体の保健師を対象とした文献の中から,彼らが保健活動を行う上で直面する困難について記述された内容を抽出し質的記述的に分析した。

    【結果】選定基準を満たす6編の文献を選定した。小規模自治体の保健師が保健活動を行う上で直面する困難は,66コードから7サブカテゴリが抽出され,最終的には3カテゴリが抽出された。3カテゴリは,【組織構造による役割遂行の複雑性】,【専門性に基づく協働の難しさ】,【地域社会との関係性に起因する職務継続の不安定さ】だった。

    【考察】小規模自治体の保健師は,多様な業務による役割の複雑さや地域との密着した関係性に伴う人材定着などの困難に直面していた。今後は統括保健師を設置することやその役割が発揮できる人材育成体制の構築,人材の定着に向けた柔軟な勤務環境の整備など,地域特性を踏まえた支援策の検討が求められる。

  • 大村 知世, 辻 京子
    2026 年71 巻1 号 p. e7-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおいて、広域行政を担う県型保健所保健師の役割を明確化するため、地域生活を阻害する「個人要因」と「環境要因」を概観し、その支援のあり方を広域的・重層的な視点を持つ調整機能として整理する。

    【方法】文献検索は、医学中央雑誌Web版を用い、2017年から2025年に発行された原著論文および総説を対象とし、「精神障害」「地域包括」「自立支援」「地域生活」「保健師」のキーワードを組み合わせた検索式により、213編を抽出した。除外基準に基づき、最終的に16編を分析対象文献とした。分析では、自立を阻害する要因を「個人要因」と「環境要因」に分類整理し、これらの要因に対応する県型保健所保健師の支援を広域行政の特性を活かした地域包括ケアにおける調整機能として整理した。

    【結果】自立を阻害する個人要因として、生活スキル(IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作))の低下や病識欠如、支援へのアクセス途絶が示された。一方、環境要因としては、社会的スティグマ、制度上の対象範囲の制限、専門的知識や経験の不足、家族機能の限界化が確認された。県型保健所保健師は、市町村との協働による重層的な支援体制の構築や社会的孤立者へのアウトリーチによる支援導入、措置入院業務を通した精神障害者への予防的支援を担っていることが明らかになった。また、自己効力感といった内的資源がリカバリーに深く関与していた。

    【考察】精神障害者の自立には、個人要因と環境要因への統合的アプローチが必要であり、県型保健所保健師は、広域行政の特性を活かし、課題解決のために二重の調整機能を担う。一つは、広域的な環境整備の調整機能として、社会的スティグマの解消や社会資源の創造と調整を行うことである。もう一つは、個別的・予防的介入の調整機能として、市町村を補完するセーフティネットを担い、困難事例への専門的介入や心理教育的支援による自己効力感・セルフマネジメント能力の向上を支援することである。

  • 大野 美賀子, 西嶋 真理子, 髙橋 香織
    2026 年71 巻1 号 p. e8-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:新型コロナウイルス感染症により行動制限がなされ,子育てへの影響を受けたであろう保育園の2歳児クラスの子どもをもつ母親自身が感じたコロナ禍での主観的な影響を明らかにする.

    方法:A社が運営する認可保育所42か所の2歳児クラスに所属する子どもの母親539名を対象に無記名の自記式質問紙調査を行った.内容は基本属性とコロナ禍の主観的影響を自由記載にて尋ね,記述結果について内容分析を行った.

    結果: 自由記載のあった155名の記載内容から抽出された計362の意味単位を分析対象とした.362の意味単位から65のコード,14のサブカテゴリ,4のカテゴリを抽出した.母親が感じたコロナ禍の主観的影響は【新しい生活様式の前向きな受容】【経験したことのない困難への対応で引き出された強み】【家庭外との関わりの減少に伴う困難】【新しい生活様式を受け入れるための課題】の4つのカテゴリで構成されていた.【新しい生活様式の前向きな受容】では,家族の結びつきの実感,節約するといった工夫など,外出制限や新しい生活様式による変化をポジティブに捉え,【経験したことのない困難への対応で引き出された強み】では,健康を保つことの意識づけや行動,制約のある環境への適応,母親自身の行動や心情の変化を感じている内容であった.【家庭外との関わりの減少に伴う困難】では,行動制限により外出できないことや人に会えないこと,子どもの心身への支障,【新しい生活様式を受け入れるための課題】では,子どもや夫との関わりや悩みを相談できないことによるストレス,マスクの着用や黙食などの新しい生活様式への対応により生じる負担や弊害を感じている内容であった.

    考察:保育園2歳児クラスの子どもをもつ母親は行動制限や感染対策などにより,子どもの成長発達への心配,心身への影響,家族との関係の変化,経済的な影響など幅広く多様な影響を感じていた.コロナ禍は子育て中の母親に多くの負担や困難をもたらしたが,困難や課題に対応することで引き出された自己解決能力やストレスへの対応力など潜在した能力や強みがあると考えられた.

  • 入野 了士, 金澤 知典, 瀨戸 裕一, 齋藤 希望, 鳥居 順子
    2026 年71 巻1 号 p. e9-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】授業と連動して地区管理関連知識の習得を支援するWeb教材を開発し、その評価を行うことで、教材開発の一知見とすることである。

    【方法】2019(令和元)年7月~2022(令和4)年3月にかけてWeb教材の開発を行い、2023(令和5)~2025(令和7)年度にかけて、A大学の保健師教育における講義や演習、実習の一連の学習を通じて地区管理を経験する授業に当該教材を導入し、毎年度評価と改善を行った。また、教材の要件17項目について総括評価を行うとともに、公衆衛生看護への興味によるWeb教材要件への評価の違いの有無についても評価した。

    【結果】Web教材のアルゴリズムは大別して5段階の思考を踏めるように構築し、内3段階はより細かく段階を踏めやすいように、さらに分割して設定した。これらに関連する内容や公衆衛生看護学実習で実践する内容を加えて、教材のメニューを作成し、一連の地区管理の活動をイメージできるように設問を配置した。授業への教材導入した各年での教材要件の評価結果を基に、教材と授業の仕方を改善した。Web教材要件の3年間の総括評価では、1年目と3年目とで、全ての項目で有意に評価が向上していた。

    【結論】Web教材要件に関する各年度および総括評価から、全ての要件項目が必須通過点に達するのに3年間を要しており、先行研究による授業改善の成果が概ね定着した期間と合致していた。教材自体の開発でも約2年半の時間を要していたが、各段階での評価を基に開発を進めたことで、教材仕様の大きな変更を避けることができていた。教材による学習効果評価を追加するとともに、本資料での取組を参考にしてもらいながら、教材開発に関する知見が今後も報告や共有されることで、同様のWeb教材開発によるさらなる学習支援が期待される。

feedback
Top