2024 年 69 巻 1 号 p. 97-104
【目的】労働者の高齢化の観点で、今後更に労働者の健康リスクを未然に防ぐ産業保健活動を推進していく必要がある。本後ろ向きコホート研究では 1 つの民間企業が取り組んだ先行的な定期健康診断事後措置について評価・分析を行った。【方法】産業医が独自判定する従来型の定期健康診断事後措置を実施した地区と、血圧、血糖、脂質に関する検査データで就業制限判定基準値に基づき意見書を発行した後、産業医面談を実施する先行的な定期健康診断事後措置を実施した地区との間で、 2 年後の血圧、血糖、脂質に関する結果の変化を比較した。【結果】従来型事後措置を実施した地区を基準として、先行的事後措置を実施した地区では、 2017 年度に比較して 2019 年度では、収縮期血圧値、拡張期血圧値、血糖値、 LDL コレステロール値、 HDL コレステロール値が統計学的に有意に改善を認めた。 HbA1c 値については、有意な変化は認めなかった。【結論】就業制限判定基準値に基づく先行的事後措置を実施することで、収縮期血圧値、拡張期血圧値、血糖値、 LDL コレステロール値、 HDL コレステロール値の改善を認めた。今後、継続的に取り組んだ結果についても分析する必要がある。また、他企業におけるエビデンスの蓄積が必須である。