2021 年 12 巻 1.2 号 p. 32-37
はじめに:硬膜動静脈瘻における頭蓋頚椎移行部での発生は稀であり,また,頭蓋頚椎移行部硬膜動静脈瘻の脊髄症状は稀といわれている.
症例:81歳男性.日内変動のある下肢筋力低下が緩徐に進行し,神経内科を受診したが神経伝導速度で異常は指摘されなかった.その後,頚部の前後屈で四肢脱力を認め,近医に救急搬送された.頚椎後縦靭帯骨化症と診断され,安静目的に入院した.退院して数日後,脊髄症状が再度出現し,さらに呼吸困難感が出現したため当院に紹介入院した.来院時の身体所見は下肢の深部腱反射が両側亢進,病的反射は両側陽性であった.徒手筋力テストは上肢が3/3,下肢が1/1であった.MRI非対応の植込み型除細動器が挿入されていたためMRI撮影できず,脊髄造影を行った.頚椎後縦靭帯骨化症は認められたが脊髄圧迫は軽度であった.造影CTで頭蓋頚椎移行部硬膜動静脈瘻を認め,脳神経外科でシャント遮断術を行った.術後,上下肢筋力,下肢の感覚障害は改善傾向であった.
結語:脊髄症状・呼吸困難を呈し診断に造影CTが有用であった頭蓋頚椎移行部硬膜動静脈瘻の1例を経験した.