2021 年 12 巻 11 号 p. 1343-1348
はじめに:更衣動作のうち下衣の着脱は成人脊柱変形患者の術後に制限されるADLの一つである.しかし,その制限の要因に具体的な根拠は示されていない.本研究では成人脊柱変形患者の術後における下衣更衣動作の自立と脊椎骨盤パラメータとの関係性を調査した.
対象と方法:2011年12月から2019年12月の期間に下位胸椎から骨盤までの脊椎後方固定術を施行した成人脊柱変形術後患者の111症例を対象とした.退院時に下衣更衣動作が自立しているものを自立群,そうでないものを介助群として,術前の股関節可動域と術前後の各X線パラメータについて群間比較を行った.
結果:自立群は36例,介助群は75例であった.両群とも手術により立位アライメントは改善されていた.術前の股関節可動域に自立群と介助群で有意差を認めなかったが,術後PTは自立群18.7±7.4 °,介助群24.6±9.7°であり介助群で有意に大きい結果となった(p<0.01).
結語:成人脊柱変形術後患者の下衣更衣動作を自立群と介助群で比較したところ,術前の股関節可動域に差はなかったが,術後の骨盤後傾が介助群で有意に大きかった.