Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
12 巻, 11 号
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Editorial
総説
  • 吉田 篤弘, 赤澤 努, 鳥居 良昭, 上野 純, 梅原 亮, 飯沼 雅央, 黒屋 進吾, 浅野 孝太, 石森 光一, 友近 顕, 仁木 久 ...
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1278-1286
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    背景:思春期特発性側弯症(AIS)の自然経過は未治療でも,のちの健康障害は少ないと結論付けられているが,長期追跡調査を行ったデータは少なく,その解釈も研究者間にばらつきもある.

    目的:AISの長期自然経過の文献的レビューを行い骨成熟後に治療介入すべき症例を再評価し,これまでの研究の問題点を抽出すること.

    方法:PubMedを用いて文献検索を行い,175文献の内容を確認し最終的に34文献を採用した.

    結果:カーブ進行は胸椎カーブで進行しやすく,特に50~75°のCobb角で年間1°以下の進行がある.肺機能はCobb角と関連あり80°以上で日常生活の息切れ,110°以上で呼吸機能不全になりえる.腰痛はCobb角と関連はなく,頻度や重症度は健常群より高い傾向にあった.死亡率や精神疾患の有病率,社会的機能は健常者と比較しても劣っていなかった.過去の研究の問題点は,病因の解明がされていないこと,長期の自然経過に関するデータが少ないこと,Onsetの不確実性がある.

    結語:手術介入はCobb角が50度を超える胸椎カーブに考慮すべきでありそれ以外では多面的に考慮すべきである.

原著
  • 田中 直, 和田 簡一郎, 熊谷 玄太郎, 浅利 享, 石橋 恭之
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1287-1293
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    Lenke type 1A-R 11例(手術時平均14.6歳),2A-R 11例(手術時平均13.6歳)のAIS患者に対する,選択的胸椎固定術後2年のdistal adding-on(DAO)の発生頻度と要因を後ろ向きに調査した.DAOは12例(54.5%)に発生し,DAO群と非DAO群とを比較すると,DAO群で術前の胸椎主カーブと術後1週の胸腰椎カーブが有意に小さく,術後の胸腰椎カーブ矯正率が有意に高かった.多重ロジスティック回帰解析の結果,DAOの危険因子は胸腰椎カーブ矯正率であり,オッズ比は1.14であった.胸腰椎カーブ矯正率が75%以上であった7例中,DAOが発生した4例は固定尾側端がLTV(Last touching vertebra),LSTV(Last substantially touching vertebra)よりも頭側であり,DAOが発生しなかった3例中2例は固定範囲内に下位終椎,LTV,LSTVの全てを含んでいた.術前に胸腰椎カーブ矯正率が75%以上見込まれる症例においては,DAO予防のため固定範囲内に下位終椎,LTV,LSTVを全て含むようにLIVを設定するのが望ましいと考えられた.

  • 野原 亜也斗, 川上 紀明, 小原 徹哉, 斎藤 敏樹, 田内 亮吏
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1294-1299
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は,特発性側弯症(AIS),lumbar modifier Cを有する症例でLIVをL3に選択した症例における術後長期成績を評価することで,椎間板変性(DD)に影響する因子をX線評価項目から抽出することである.

    対象と方法:AIS lumbar modifier C,性別は女性,後方,もしくは前方後方矯正固定術で固定下端椎(LIV)をL3,手術時年齢11歳から20歳,術後10年時にX線,腰椎MRIを施行した44例を対象とした.

    結果:術後10年時のMRIにて椎間板変性を21例48%に認めた.椎間板変性の有無で比較検討すると,有意差を認めた項目は術前,術後10年L3/4椎間板角(DA),術前側屈における胸腰椎/腰椎側弯角とflexibilityであった.術前L3/4DAと椎間板変性との関係をみると,L3/4DA>5°で急激に椎間板変性発生率が増加していた.

    結語:AIS lumbar modifier CでLIVをL3とした症例では,術直後のL3/4椎間板楔状角のみならず,術前の楔状角度も術後の椎間板変性発生に影響を与えていた.

  • 奥村 太朗, 加藤木 丈英, 小谷 俊明, 佐久間 毅, 中山 敬太, 飯島 靖, 南 昌平
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1300-1305
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:術前運動習慣の有無が手術後の思春期特発性側弯症(AIS)患者の腹筋力に与える影響について調査した.

    対象と方法:AIS患者59例(全例女性)を対象とし,新体力テストの1種目である上体起こしを用いて術前および術後1年,2年の腹筋力を定量的に評価した.なお,上体起こしは30秒間の最大回数を計測し,得られた計測値から上体起こし術後変化率も算出した.部活動の所属を術前に聴取し運動部群,非運動部群に分け,上体起こしの回数の比較,上体起こし術後変化率と術後Cobb角,Cobb角矯正率,椎体固定数,最固定下端椎体(LIV),長座体前屈との相関をそれぞれ群内で検討した.

    結果:運動部群は術後2年で術前と同等レベルまでの改善を認めた一方,非運動群では回復しなかった.上体起こし術後変化率と相関する因子はなかった.

    結語:術前に日常的な運動習慣があるとAIS患者の腹筋力は術後2年で術前値と同等レベルまで改善する.

  • 奥 規博, 出村 諭, 加藤 仁志, 新村 和也, 横川 文彬, 黒川 由貴, 半田 真人, 安念 遼平, 土屋 弘行
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1306-1310
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    小児脊柱側弯症に対する保存的治療として装具療法が行われているが,装具装着による体幹筋力への影響に関して一定のコンセンサスは得られていない.また,装具療法導入時より前向きに検討した報告はない.本研究では,装具療法を開始する小児側弯症患者に対して腹部体幹筋力を前向きに計測し,装具療法による腹部体幹筋力と側弯症との関係性を調査した.装具療法を開始する20例に対して,開始前と6ヶ月の身長,体重などの身体測定項目,腹部体幹筋力,Cobb角を測定した.Cobb角が改善か不変であるものをStable群,進行したものをProgressive群に分類し,両群において各測定項目を比較検討した.身長,体重,BMIは両群で有意に増加し,腹部体幹筋力はStable群で有意に増加したが,Progressive群では有意な増加を認めなかった.小児側弯症患者に対する装具療法は,腹部体幹筋力に対して負の影響を与えなかったが,装具装着中の腹部体幹筋力の変化は側弯の進行に関連している可能性が示唆された.

  • 馬場 聡史, 川上 紀明, 小原 徹哉, 齊藤 敏樹, 田内 亮吏, 森下 和明, 山内 一平
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1311-1318
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:早期発症側弯症(EOS)では,進行する脊柱変形に対して幼少期から成長温存手術を行い,比較的早期に最終固定に至ることが多いが,最終固定の経過を含めた長期の成長過程については不明の点も多い.本研究の目的は,Growing-rod法を施行したEOS患者の成長過程を,初回設置から最終固定後2年までの期間で調査することである.

    対象と方法:Growing-rod法を施行した10症例のEOSを対象に,初回設置時から最終固定後2年経過時まで,主弯曲Cobb角,脊椎高,身長,体重などを計測し,成長過程や手術関連合併症を評価した.

    結果:主弯曲Cobb角は平均すると初回設置で39°改善,成長温存手術期間に4°進行,最終固定で16°改善,最終固定後2年で3°進行した.脊椎高は,初回設置時と成長温存手術期間に大きく増加し,最終固定や最終固定後2年間での変化は少なかった.手術関連合併症を40%に認めた.

    結語:EOSに対する成長温存手術において,全体の治療過程において初回設置が主弯曲Cobb角の矯正,脊椎高の獲得に最も寄与が大きいことが示された.

  • 鈴木 哲平, 宇野 耕吉, 川北 晃平, 伊藤 雅明
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1319-1325
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:早期発症側弯症に対しては近年Growth friendly surgeryが大勢を占めるが多数回手術や合併症の多さなど様々な問題点が山積している.近年,早期固定術を学童期に行うことで,それらの問題点を解決することが多施設データベースから検討されるようになった.今回,骨未成熟患者に対する単一術者による早期最終固定術と最終固定を終えた従来型グローイングロッド手術の結果を比較検証した.

    対象と方法:重度脊柱変形を有する早期発症側弯症9歳から11歳に対して早期脊椎固定術を16例に適応した.過去に同一年齢に適応し,最終固定術を終えたグローイングロッド手術11症例と比較した.

    結果:最終観察時の主カーブの矯正率,獲得体幹長も2群間に有意差を認めなかった.グローイングロッド手術群では経過とともに胸椎後弯の増大を認め,早期固定術群と比較して有意差を認めた.また再手術を含めた手術回数はグローイングロッド手術群で有意に多かった.

    結語:骨未成熟であっても9歳以上であれば早期固定術は選択肢となりえる.

  • 飯塚 正明, 野原 亜也斗, 岸田 俊一, 馬場 聡史, 正田 修己, 小野 貴司
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1326-1331
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    早期発症側弯症の治療の目的は,側弯の進行予防と共に脊柱と胸郭の成長を温存し胸郭不全症候群を予防することにある.主体となる治療法は成長温存手術であるが,手術までの待機期間におけるcast治療について焦点が当てられる事は少ない.無麻酔下でのCorrective castとBraceを患児の状態に応じて可能な限り繰り返し行うことで,数年という短期間であっても良好な成績を得た.

  • 宮城 正行, 松本 光圭, 三村 悠祐, 齋藤 亘, 井村 貴之, 中澤 俊之, 白澤 栄樹, 池田 信介, 井上 翔, 黒田 晃義, 川久 ...
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1332-1337
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:神経筋原性側弯症(NMS)手術の周術期合併症率が高いことが報告されている.本研究ではNMS手術の周術期合併症を調査し,危険因子について検討した.

    対象と方法:NMSに対して後方矯正固定術を施行した126例を対象に,周術期合併症,手術時年齢,身長,体重,術前呼吸機能(%肺活量,1秒率),術前心機能(駆出率),歩行の状態,術前Cobb角,手術時間,術中出血量,骨盤固定の有無,側弯矯正率を調査した.周術期合併症は手術手技による合併症を除き,評価項目の周術期合併症発生の有無による2群間比較を行った.

    結果:39症例(31.0%)に周術期合併症を認め,硬膜損傷など手術手技による合併症7例を除いた32例のうち呼吸器合併症12例,循環器合併症5例が含まれていた.合併症有群では有意に%肺活量が低く,術中出血量が多く,側弯矯正率が不良であった(p<0.05)が,多重ロジスティック回帰分析では%肺活量が低いことが独立した危険因子として抽出された.

    結語:NMS手術の周術期合併症の発生率は高く,呼吸器合併症が多かった.周術期合併症を起こした群では,術中出血量多量,側弯矯正率不良であり,特に重度の拘束性換気障害は周術期合併症発生の危険因子である可能性がある.

  • 田内 亮吏, 川上 紀明, 小原 徹哉, 齊藤 敏樹, 山内 一平, 岩沢 太司
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1338-1342
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    神経線維腫症I型(NF1)のdystrophicタイプ側弯症の手術成績については,様々な報告があるが,本疾患における胸郭変形についての報告は未だない.本研究の目的は,NF1に伴うdystrophicタイプ側弯症における胸郭変形の特徴と呼吸機能を検討することである.NF1に伴うdystrophicタイプ側弯症に対して矯正手術を施行した患者38名を対象とした.男性22名,女性16名で,初回手術時平均年齢は12.6歳,平均経過観察期間は13.1年であった.主カーブCobb角は術前69.6度,最終観察時27.5度であった.最終観察時,胸郭変形は11例(29%)に認められた.胸郭変形部位は側弯主カーブ凸側10例,凹側1例であった.手術時の平均年齢は胸郭変形あり群となし群で有意差があった(8.9歳 vs 14.1歳,p=0.004).脊椎長(T1~T12)は胸郭変形あり群が胸郭変形なし群に比べて有意に小さかった(21.3 cm vs 23.6 cm,p=0.01).Rib pencilingの数は胸郭変形あり群が胸郭変形なし群に比べて有意に多かった(6.1本vs 1.9本,p<0.001).呼吸機能(FVC)は胸郭変形有り群で有意に低かった(1,880 ml vs 2,705 ml,p<0.001).FEV1.0%は,両群に有意差はなかった.NF1 dystrophicタイプ側弯症では,胸郭変形を伴う症例において,脊柱変形だけでなく,胸郭原性の呼吸機能低下にも注意を払う必要がある.

  • 寺尾 貴史, 山内 芳宣, 蔵川 拓外, 劉 正夫, 松尾 智哉, 山本 修士, 伊藤 雅明, 鈴木 哲平, 川北 晃平, 宇野 耕吉
    2021 年 12 巻 11 号 p. 1343-1348
    発行日: 2021/11/20
    公開日: 2021/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:更衣動作のうち下衣の着脱は成人脊柱変形患者の術後に制限されるADLの一つである.しかし,その制限の要因に具体的な根拠は示されていない.本研究では成人脊柱変形患者の術後における下衣更衣動作の自立と脊椎骨盤パラメータとの関係性を調査した.

    対象と方法:2011年12月から2019年12月の期間に下位胸椎から骨盤までの脊椎後方固定術を施行した成人脊柱変形術後患者の111症例を対象とした.退院時に下衣更衣動作が自立しているものを自立群,そうでないものを介助群として,術前の股関節可動域と術前後の各X線パラメータについて群間比較を行った.

    結果:自立群は36例,介助群は75例であった.両群とも手術により立位アライメントは改善されていた.術前の股関節可動域に自立群と介助群で有意差を認めなかったが,術後PTは自立群18.7±7.4 °,介助群24.6±9.7°であり介助群で有意に大きい結果となった(p<0.01).

    結語:成人脊柱変形術後患者の下衣更衣動作を自立群と介助群で比較したところ,術前の股関節可動域に差はなかったが,術後の骨盤後傾が介助群で有意に大きかった.

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