2021 年 12 巻 5 号 p. 703-708
はじめに:成人脊柱変形(ASD)は運動機能障害の原因となるが,ロコモティブシンドロームとの関与は不明である.手術加療を要したASDを対象としてロコモの頻度,脊椎骨盤パラメータとの関与,術後の2年時までの変化について検討した.
対象と方法:女性のASDに対して下位胸椎レベルから骨盤までの矯正固定術を施行し2年以上経過観察し,ロコモとサルコペニアの評価項目を計測し得た47例を対象とした.術前,術後1年,2年時に立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25アンケートを施行してロコモ度を評価した.術前・術後2年時の脊椎骨盤パラメータとロコモ度の相関を求めた.
結果:術前全症例がロコモで91%は最も進行したロコモ度3であった.術後2年時にロコモ度3の割合は55%までに改善した.脊椎骨盤パラメータのうちsagittal vertical axis(SVA)が術前ロコモ進行度と相関した.術後ロコモ25で歩行能力に関与した項目で改善し,パンツやズボンの着脱のしやすさは増悪した.
結語:ASDには重度ロコモを持つ割合が高く,手術により改善する項目と改善しない項目が明らかになったが,総合的にロコモの頻度と進行度は改善された.