2021 年 12 巻 6 号 p. 870-874
はじめに:当院では腰椎手術患者に対する術後早期の理学療法として,座位での両上肢拳上位にて左右股関節を交互に屈曲させるエクササイズ(術後Ex)を施行してきた.術後Exにおける両上肢挙上および股関節屈曲運動が体幹筋活動に与える影響について,表面筋電図波形を用いて検討した.
対象と方法:対象は健常成人10例,測定筋は外腹斜筋(EO),内腹斜筋(IO),腰部脊柱起立筋(LE)とした.動作項目は,1)両上肢下垂位での測定同側股関節屈曲,2)両上肢最大挙上位での同側股関節屈曲,3)両上肢下垂位での測定対側股関節屈曲,4)両上肢最大挙上位での対側股関節屈曲とし,安静座位を基準値としてその変化量を求めた.
結果:EOおよびIOでは同側股関節屈曲に両上肢拳上を加えることで有意に高い筋活動を示した(p<0.05).LEでは各動作で筋活動の増加はみられなかった.
結語:当院術後Exは,術創部の腰部脊柱起立筋に負荷をかけず,両上肢拳上により胸郭‐脊柱‐骨盤帯を安定させつつ,股関節屈曲による腹斜筋群の活動性増強効果をさらに増強する効果があり,術後早期の運動療法として有効であると考えられた.