2021 年 12 巻 6 号 p. 864-869
はじめに:本研究の目的は,除圧椎間数の術後腰椎機能への影響について検討することである.
対象と方法:当科にて腰部脊柱管狭窄症と診断し顕微鏡視下後方除圧術を施行し,術後1年以上の経過観察が可能であった291症例を対象とした.術前と術後1年のJOAスコアと日本整形外科学会腰痛疾患問診票(以下JOABPEQ)の各重症度スコア,腰痛のvisual analogue scale(以下VAS)を計測した.1椎間除圧群(S群)と2椎間以上除圧群(M群)の2群間で比較し,さらに,手術椎間数と,JOABPEQの各重症度スコア,腰痛のVAS,平林の改善率との相関性をSpearmanの順位相関係数を算出し検討した.
結果:JOABPEQの重症度スコアである腰椎機能障害と歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害の術後スコアとその変化量について,S群が有意に高値であった.手術椎間数と歩行機能障害の変化量に負の相関を認めた.
結語:初回手術の他椎間に対する再手術を防ぐためには複数椎間手術を躊躇してはならないが,術後の腰椎機能の低下や腰痛を防ぐためには,それぞれの症例について年齢や責任高位,脊柱管面積などを検討し,適切な除圧椎間を決定することが重要である.