2021 年 12 巻 6 号 p. 898-902
症例は69歳男性.他院で頚椎および腰椎の手術を多数回受けている.最後にT11~L5後方除圧固定術を施行されて6年後に当院を初診した.腰痛と間欠跛行,ふらつき,T11以下の感覚障害,左下肢に筋力低下を認めた.胸腰椎単純X線像でT11・T12のスクリューのゆるみがあり,Cobb角が27度の側弯と前傾姿勢の増大を認めた.CT像ではスクリューのゆるみと偏位があり,T11左側のスクリューは脊柱管の内壁を破壊して脊髄を圧迫していた.脊髄損傷に注意しながらスクリューを抜去し,固定をT7まで延長した.術後はふらつきもなく5 km以上の歩行が可能となっている.Proximal junctional failure(PJF)は矢状面変化による報告が多いが,今回の症例は胸腰椎固定術後に近位スクリューの矢状面および冠状面でのゆるみにより,脊柱管の骨破壊と脊髄症を呈して再手術となった.日常生活で姿勢を維持するために横方向への矯正運動が繰り返されてゆるみが発生したと推察した.冠状面PJFの予防のためには腰椎下部および腰仙部の矢状面と冠状面アライメントの矯正,また近位固定端をT9より上位にすることが必要と考える.