2021 年 12 巻 9 号 p. 1152-1160
はじめに:変性すべり合併腰部脊柱管狭窄症に対する低侵襲除圧の有効性と限界を除圧椎間と症状の変化,性別から検討した.
対象と方法:変性すべり合併L4-5脊柱管狭窄症に顕微鏡視下除圧を施行し2年経過観察した76例を対象とした.検討項目をJOA score,VASによる腰痛と下肢症状,前・後屈,中間位でのすべり率,前・後屈すべり率の差(Δ% slip),および椎間可動域(ROM)とし,各項目の経過と性別の関連性を二元配置分散分析を用いて解析した.
結果:再手術を6例に要し,その原因は除圧椎間の変性が4例,L3/4脊柱管狭窄が2例であった.その他の70例において,すべての検討項目で性別と術後経過に交互作用なく,JOA scoreは術後1年まで,腰痛と下肢症状は毎年改善した.すべりの進行は術後1年で停止し,Δ% slipは術前後を通じて変化を認めなかったが,ROMは減少傾向を認めた.
結語:除圧後の臨床経過に性差なく,すべり進行は術後1年で停止し,症状は術後2年まで改善する.ただし,すべり進行停止までの1年前後は除圧椎間の変性進行に伴う症状再燃の危険性も高く注意を要する.