2022 年 13 巻 11 号 p. 1223-1228
はじめに:成人脊柱変形においてX線計測項目を用いた検討の報告は多いが,体幹機能の縦断変化も含めた報告は見受けられない.本研究の目的は,体幹機能および脊柱骨盤矢状面アライメントの縦断変化を検討することである.
対象と方法:2010年から2020年の間に,住民脊柱検診に参加した中高齢女性のうち,初回検診(平均年齢65.2歳)から5年以上経過後に再度検診(平均年齢71.3歳)に参加した89名,平均6年間の縦断変化を調査した.X線項目は,SVA,TK,LL,SS,PT,PIを計測した.身体機能項目は,腹筋力および背筋力,脊柱背屈可動域,立位時および歩行時の体幹前傾角,FRT,BMI,腰痛VAS,HRQOLを評価した.各評価項目を初回検診時と再検診時で,比較検討した.
結果:身体機能項目では,腹筋力および背筋力が初回検診時に比べ再検診時で有意に低下,立位時および歩行時の体幹前傾角では有意に増加していた.X線計測項目では,SVAおよびPTで初回検診時に比べ再検診時で有意に増加,LLおよびSSでは有意に減少していた.
結語:身体機能の中でも体幹筋力低下と立位・歩行時の体幹前傾姿勢の増大が脊柱骨盤矢状面アライメントの変化と並行して起こっていることが明らかとなった.