2022 年 13 巻 11 号 p. 1177-1185
はじめに:思春期特発性側弯症(AIS)に起因するウエストラインの非対称(WLA)は,患児自ら直接確認できるが,他覚的に定量的評価を行った報告は少ない.本研究の目的はWLAの定量的評価を行い,WLAが患児の自己イメージに与える影響を調査する事である.
対象と方法:2013年から2019年に手術加療を行ったAIS女児32人を対象とし,術前と術後1年時に撮影した全脊椎立位正面像における体の非対称性を調査した.体の非対称性は,肩の高さの差,胸郭側方偏位,体幹バランス,WLAで評価した.WLAはウエストの高さの差(WHI),ウエスト側方偏位(WDI),ウエスト角度比(WAR)の3因子で評価した.100点満点に換算したSRS-22のSelf-imageスコアと最も関連する因子を重回帰分析にて解析した.
結果:体幹バランスを除く全ての体の非対称性とSelf-imageスコアは術後1年時に有意に改善した.Self-imageスコアに有意に関わる因子として,WLAを構成する全ての因子が抽出された.Self-imageスコアの予測式は,Self-imageスコア=93.7-0.41×|WHI|-0.65×|WDI|-0.76×|WAR|となった.
結語:WLAはSelf-imageスコアと有意に関連していた.患児の自己イメージ改善にはWLAを正常化させることが重要である.どのような手術がWLAを正常化させるのか,今後の研究課題である.