2022 年 13 巻 12 号 p. 1277-1281
はじめに:思春期脊柱側弯症の矯正手術におけるトラネキサム酸(TXA)投与の有用性について後ろ向きに検討した.
対象と方法:思春期脊柱側弯症にて後方矯正固定術を施行し術中にTXA投与を行った10例と,対照群として性別,年齢,カーブタイプ,術前Cobb角,手術時間をマッチングさせたTXA非投与の過去の手術症例10例を比較検討した.TXA投与を皮膚切開前に10 mg/kgを初期負荷静注し1 mg/kg/hrで皮膚縫合終了まで持続投与した.TXA投与群と非投与群の2群間で術中出血量,輸血量,合併症を検討した.
結果:平均出血量はTXA投与群で平均563 g,非投与群で平均936 gとTXA投与群で少ない傾向を認めた(P=0.089).平均輸血量はTXA投与群で平均153 g,非投与群で平均847 gであった(P=0.003).両群ともに合併症は認めなかった.今回の検討では輸血量の有意な減少を認めた.
結語:術中出血量の有意な減少にはより高用量の投与が必要と考えられた.思春期側弯症の矯正手術においてTXA投与は術中出血対策に有効である可能性が示唆された.