Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
13 巻, 12 号
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Editorial
原著
  • 河村 一郎, 山元 拓哉, 冨永 博之, 佐久間 大輔, 徳本 寛人, 眞田 雅人, 谷口 昇
    2022 年 13 巻 12 号 p. 1265-1270
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    思春期特発性側弯症Lenke type 1Aでは,L4が右傾斜の1A-Rと左傾斜の1A-Lとに細分化され,1A-Rはdistal adding-on(DA)のリスクが高いとされている.今回Lenke type 1A-RにおけるDAと関連する因子,特に椎体回旋に関して検討した.2009年12月よりLenke type 1A-Rに対し手術を施行した,連続する15例中,画像欠損:1例,drop out:1例を除いた13例(手術時平均年齢:15.3±2.1歳)を対象とした.DAの定義はChoらが報告した①Cobb角の5度以上の増加②終椎の遠心移動とした.患者背景と術前,初回立位時および術後2年でのX線パラメータ,CTを用いた椎体回旋を術後DAの有無で検討した.術後DAを4/13例(30.7%)に認めた.DAを認めなかったDA-群とDA+群の2群間比較では,DA+群において初回立位時と比べ術後2年時にLIVはLIV+1と間で右回旋が生じていた(p=0.02).DA+群では初回立位時のUIV回旋が左回旋の傾向があり(p=0.07),術後2年でそれらが解消されたことから,DAはLIVを右回旋することでUIV回旋遺残を代償することで生じる可能性があり,Lenke type 1A-Rにおけるdistal adding-onと椎体回旋の関連が示唆された.

  • 山口 雄大, 森下 雄一郎, 河野 修, 中島 康晴, 前田 健
    2022 年 13 巻 12 号 p. 1271-1276
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:10代未年者と65歳以上高齢者の骨傷を伴う外傷性頚髄損傷の病態生理について比較検討した.

    対象と方法:2009年から2018年の10年間で,受傷後72時間以内の初期診断と受傷後24ヶ月以上の経過観察が可能であった骨傷を伴う頚髄損傷患者の10代未年者18名と65歳以上高齢者26名を対象とした.

    American Spinal Injury Association(ASIA)impairment scale(AIS),ASIA motor score(AMS),改良Frankel分類(Fr)を用いて受傷後の神経学的およびADLの経時的評価を行った.

    結果:初診時の平均AMS(上肢/下肢/total)は,若年群15.33±10.25/5.61±13.52/20.94±21.03,高齢群31.92±17.59/21.73±23.9/53.65±38.62と,若年群が重篤な四肢麻痺を呈していた.最終時AMSは,若年群28.94±15.48/21.11±24.59/50.06±38.9,高齢群35.85±16.97/26.69±24.38/62.54±38.83と上下肢ともに高齢群が高値であったが,初診時から最終評価時のAMS improvement ratio(%)で比較すると,若年群44.15±41.55,高齢群28.56±40.01と若年群の神経学的回復が有意に良好であった.

    また,不全麻痺(AIS B以上)症例では,若年群の7/7例(100%)と高齢群の12/18例(66.67%)が最終観察時に歩行能力獲得(Fr D2以上)していた.

    結語:未成年者のAMS improvement ratioは高齢者より有意に高く,未成年者の損傷脊髄は,高齢者と比較すると潜在的損傷回復能力が高いことが示唆された.また,初診時に不全麻痺であれば,未成年者は自立歩行での社会復帰をゴールに設定することができると思われた.

  • 永尾 祐治, 寒竹 司, 富永 俊克, 今城 靖明, 鈴木 秀典, 西田 周泰, 舩場 真裕, 坂井 孝司, 田口 敏彦
    2022 年 13 巻 12 号 p. 1277-1281
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:思春期脊柱側弯症の矯正手術におけるトラネキサム酸(TXA)投与の有用性について後ろ向きに検討した.

    対象と方法:思春期脊柱側弯症にて後方矯正固定術を施行し術中にTXA投与を行った10例と,対照群として性別,年齢,カーブタイプ,術前Cobb角,手術時間をマッチングさせたTXA非投与の過去の手術症例10例を比較検討した.TXA投与を皮膚切開前に10 mg/kgを初期負荷静注し1 mg/kg/hrで皮膚縫合終了まで持続投与した.TXA投与群と非投与群の2群間で術中出血量,輸血量,合併症を検討した.

    結果:平均出血量はTXA投与群で平均563 g,非投与群で平均936 gとTXA投与群で少ない傾向を認めた(P=0.089).平均輸血量はTXA投与群で平均153 g,非投与群で平均847 gであった(P=0.003).両群ともに合併症は認めなかった.今回の検討では輸血量の有意な減少を認めた.

    結語:術中出血量の有意な減少にはより高用量の投与が必要と考えられた.思春期側弯症の矯正手術においてTXA投与は術中出血対策に有効である可能性が示唆された.

  • 小林 孝巨, 郭 墅, 森本 忠嗣, 東藤 貢, 前田 和政, 吉原 智仁, 馬渡 正明
    2022 年 13 巻 12 号 p. 1282-1287
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:高齢者における低エネルギーの伸展損傷による軸椎歯突起骨折のメカニズム(あるいは発生機序)は結論づけられていない.本研究の目的は,高齢者における頸椎の伸展損傷による軸椎歯突起骨折のメカニズム(発生機序)を有限要素解析によって調査する事である.

    対象と方法:65歳女性(症例1),77歳男性(症例2),73歳男性(症例3)を対象にし,各々の症例で軸椎(C2)単体モデルと後頭骨(C0)-環椎(C1)-C2複合体モデルを作成した.C2下面で完全固定とし,C2単体モデル/C0-C1-C2複合体モデル各々にC2/C0前方より2,000 Nの水平外力を加えた.各症例でC2の平均骨密度,相当応力,破壊状態を調査した.Andersonらの分類に準じて,I型(歯突起先端の斜骨折),II型(歯突起基部までの骨折),III型(椎体骨折)に分類した.

    結果:症例1,2,3のC2モデル骨密度は各々,420 mg/cm3,610 mg/cm3,620 mg/cm3であった.症例1,2,3のC2モデル/C0-C1-C2複合体モデルで,II型の軸椎歯突起骨折部位に応力集中と破壊を認めた.

    結語:頸椎への伸展外力によりII型の軸椎歯突起骨折をきたしやすいことが示唆された.

  • 本田 英一郎, 白石 昭司, 大園 恵介, 劉 軒, 田中 達也
    2022 年 13 巻 12 号 p. 1288-1294
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    腰椎分離症は学童期に始まり,加齢とともに繰り返される関節間部の強い運動負荷にて分離症は完成するために男性アスリートに多く発症している.このために本症の原因は後天的とされているが,本例37歳男性の場合には,L4腰椎の左下関節欠損の他,先天的要因であるL5腰椎棘突起と仙骨は広範囲の二分脊椎の所見を呈し,さらにL5椎体は分離症と下関節の形成不全を思わせる形態と術中確認された左conjoined nerve rootも合併しており,本症には先天,後天の両方の因子が作用していると考えられた.治療はリハビリ効果がなく,多発関節間部欠損があったために2椎間の後方椎間固定術を行った.

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