Journal of Spine Research
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Print ISSN : 1884-7137
症例報告
脊椎手術における全自己フィブリン糊の使用経験
佐々木 大雄三宅 敦安田 明正北村 和也寺本 裕明天野 翔太遠藤 想今井 大輔栗田 洋平千葉 一裕
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2022 年 13 巻 2 号 p. 137-143

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抄録

はじめに:全て自己血から精製される全自己フィブリン糊は,ウイルス感染やアレルギー反応などの懸念がある市販フィブリン製剤や,以前より使用されていた用手法での自己フィブリン糊と比較してより安全であるが,その使用報告はまだ少ない.今回硬膜内腫瘍摘出時に全自己フィブリン糊を使用した3例を経験したので報告する.

症例:2020年3月から7月に硬膜内腫瘍摘出術を施行した3例でいずれも馬尾腫瘍であった.術前に自己血400 mlを貯血し,CryoSeal Systemを用いてフィブリノゲンを含む自己クリオプレシピテート及び自己トロンビンを作成した.手術は腫瘍を摘出した後,硬膜を連続縫合し,polyglycolic acid(PGA)シートと全自己フィブリン糊で硬膜縫合部を被覆した.3例とも術中に髄液の漏出は認めなかった.1例で術後にドレーンから髄液様の排液を認め,頭痛を訴えたが,数日で自然軽快した.いずれの症例も術後MRIで髄液漏を認めなかった.

結語:全自己フィブリン糊は同種血製剤を使用することによるウイルス感染やアレルギー反応のリスクを避けられ,より安全である.今後は硬膜修復だけでなく,止血目的での使用など適応を拡大し有効性についてさらに検討していきたい.

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© 2022 Journal of Spine Research編集委員会
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