はじめに:神経合併症は脊椎脊髄手術にとって回避すべき合併症の一つである.本研究では,マルチモダリティを用いた術中脊髄モニタリングと術中対応策の効果を調査した.
対象と方法:成人脊柱変形手術272例で使用した経頭蓋刺激筋誘発電位(TcMEP),持続筋電図モニター(fEMG),短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)から波形変化と術後神経障害の関係を後ろ向きに観察した.
結果:TcMEP単独22例,fEMG単独5例,TcMEPとfEMG30例,TcMEPとSSEP1例のAlertを認めた.手術操作の一時中断,除圧追加,ロッドの一時抜去,麻酔調整,昇圧,輸血などの術中対応策を施行したが,手術終了時に波形の回復を認めなかったTcMEP単独11例,TcMEPとSSEP1例,TcMEPとfEMG18例のうち,17例(56.7%)にて術後神経障害を認めた(全症例中6.3%).モニタリング精度は感度100%,特異度92.9%,陽性的中率48.6%,陰性的中率100%であった.
結語:神経合併症の軽減には,マルチモダリティを用いた術中脊髄モニタリングの適切なAlertと術中対応策が必要であると考えられた.
抄録全体を表示