2022 年 13 巻 4 号 p. 726-730
はじめに:骨盤輪骨折は様々な合併症を引き起こすが,神経障害はQOLに関わる重要な合併症のひとつである.神経障害がもたらす弊害は深刻なものであるにも関わらず,外傷急性期の重篤な病態ゆえに見落とされることも多い.我々は骨盤輪骨折後,遅発性にS1神経根障害を来した症例を経験し,手術加療を行うことで症状が改善したため報告する.
症例:23歳,女性.仕事中に倒れてきた建材に挟まれて受傷し救急搬送された.骨盤輪骨折を認め,受傷後6日目に骨接合術を施行した.術後4週間の両下肢免荷訓練後に荷重訓練を開始した.荷重訓練を開始した直後から,右下肢の疼痛と筋力低下を認めた.CTおよびMRI検査から,仙骨骨折部周囲での右S1神経根障害を疑った.保存的加療後も症状は改善しなかった.術後4ヶ月で右S1神経根の除圧術を行い症状の改善を認めた.
結語:骨盤輪骨折後の遅発性S1神経根障害を来した症例を経験した.まれではあるが,骨盤骨折後に遅発性の神経障害が生じることがあるため,注意深い経過観察が必要である.