2022 年 13 巻 6 号 p. 851-859
はじめに:痛みは神経活動であり,腰殿部痛には末梢神経が深く関与する.超音波ガイド下注射では,末梢神経に対する正確な薬液注入が可能であり,ブラインド注射に比べ除痛効果からの病態解釈がより正確である.超音波ガイド下注射の基本,腰殿部痛に対する末梢神経を標的とした超音波ガイド下注射の実際について解説する.
技術報告:超音波ガイド下注射では,ポジショニング,適切なプローブ選択とプローブ走査,適切な針選択と針刺入法,使用場所に合わせた薬剤選択,正確な薬液注入,注射前後の評価が重要である.神経外膜へ生理食塩水を注入する超音波ガイド下ハイドロリリースは,薬剤による副作用の心配がない.超音波ガイド下注射の主な標的神経は,脊髄神経後枝・脊髄神経硬膜枝・上殿皮神経・中殿皮神経・後大腿皮神経・上殿神経である.痛がる部位,圧痛部位から注射の標的神経を決定する.
結論:末梢神経を無視した病態解釈は,不適切な保存治療を容認し,期待に反した手術結果を生み出す元凶になる.痛みの病態を末梢神経で考える頭の切り替えが必要である.