2022 年 13 巻 6 号 p. 860-867
立位時における,体幹屈曲および伸展動作時の腰部多裂筋の血液循環動態の経時的変化を,腰痛の有無で比較検証を行った.成人男性腰痛有群10名(平均年齢21.0±0.8),腰痛無群10名(平均年齢21.1±0.7)に対し,近赤外線組織血液酸素モニター装置(NIRS)を用い,腰部多裂筋の血液循環動態の測定を行った.対象者に,直立位から屈曲位もしくは伸展位に動作を行わせ,その際の腰部多裂筋のOxy-Hb,Deoxy-HbおよびTotal-Hbの変化を,それぞれ直立位,姿勢直後,30秒後で測定し,比較検証を行った.結果,屈曲位においては,腰痛の有無において,Oxy-Hb,Deoxy-Hb,Total-Hb全てにおいて,有意な交互作用および腰痛有無の主効果を認めなかった.しかしながら,姿勢の変化による経時的変化においては,有意な減少を認めた.伸展位においては,腰痛の有無において,Oxy-Hb,Deoxy-Hb,Total-Hb全てにおいて,有意な交互作用および腰痛有無の主効果を認めなかった.しかしながら,姿勢の変化による経時的変化においては,有意な増加を認めた.以上のことから,屈曲時は腰痛の有無にかかわらず血流循環動態が減少し,伸展時は,腰痛の有無にかかわらず,血流循環動態が改善することが示唆された.