2022 年 13 巻 6 号 p. 881-889
はじめに:慢性腰痛を有する高齢脊柱変形患者に対する理学療法効果は散見され,改善効果が期待できる患者特性は不明である.本研究では,運動療法を中心とした理学療法の有用性を検証するとともに,症状の改善効果が期待できる患者特性を検証した.
対象と方法:3ヶ月間の理学療法を受けた53名を対象とし,介入前後にVAS,6MWT,TUG,JOABPEQを評価した.統計学的解析では,①介入効果の検証②改善効果を認めた群と認めなかった群の介入前評価項目の相違検証③②で有意差を認めた項目のカットオフ値の算出とした.
結果:VASの改善は22名(41%),JOABPEQが1ドメイン以上改善した者は44名(83%)だった.介入前後の比較では,TUG以外全ての項目で有意な改善を認め,介入前の各種評価項目ではVASおよび6MWTが改善効果を期待できる項目と抽出され,カットオフ値はそれぞれ53.5,243だった.
結語:慢性腰痛を有する高齢脊柱変形患者に対する運動療法を中心とした3ヶ月間の理学療法によって腰痛の軽減や歩行能力の改善,健康関連QOLの改善が得られることが示唆された.また,症状の改善効果が期待できる特徴として,介入時のVASが52 mm以上であり,6MWTが242 m以上可能であることが示唆された.