Journal of Spine Research
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Print ISSN : 1884-7137
症例報告
偽性局在徴候として上位胸髄圧迫病変により下垂足を主訴とした2例
網代 泰充米澤 郁穂栗本 久嗣大堀 靖夫
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2022 年 13 巻 9 号 p. 1097-1104

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抄録

はじめに:頚髄,胸髄の圧迫病変によりまれに下肢痛を呈することがあり,“false localizing sign”と呼称されている.下肢痛もまれであるが下垂足は非常にまれである.今回,上位胸髄圧迫病変により下垂足を呈した2例を経験したので報告する.

症例:症例1:72歳男性,第2~3胸髄圧迫による右下垂足の診断にて除圧固定術を施行し,術後下垂足の改善を認めた.症例2:42歳女性,第1胸髄レベルの髄膜腫による左下垂足に対し腫瘍摘出術を施行し,術後左下垂足は回復した.

結語:自験例の共通点は,①下垂足を説明し得る腰椎,胸腰椎移行部病変の欠如②腸腰筋筋力の低下③上背部痛④画像上脊髄外側での圧迫所見が強い,ことであった.頚胸椎移行部は可動性や弯曲の変化するところであり,さらに側副血行路も乏しい.この解剖学的特徴がfalse localizing signとして発現したのかもしれない.上位胸髄圧迫病変により下垂足を呈することがあり,腰椎画像所見に乏しい下垂足を認めた際は脊髄病変の可能性を考慮するべきである.

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© 2022 Journal of Spine Research編集委員会
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