2023 年 14 巻 1 号 p. 31-37
はじめに:成人におけるL5腰椎分離すべり症の術後に一過性に神経痛悪化を認めることがある.本研究の目的はL5腰椎分離すべり症術後の神経根への手術操作が原因と考えられる神経症状の特徴と発生に関わる因子を検討することである.
対象と方法:Meyerding 2度以内のL5腰椎分離すべり症に対して手術をおこなった18例を対象とした.男性16例,女性2例,平均年齢は61.3歳で術後に一過性の神経痛の悪化を認めた5例(P群)と認めなかった13例(N群)について年齢,性別,罹病期間,術前JOA score,画像所見,手術方法,手術時間,出血量について比較検討をおこなった.
結果:疼痛はL5神経根支配領域に限局し体動時痛で経時的な悪化はなかった.2群間比較では罹病期間,椎間孔高,脊柱管狭窄の合併,後根神経節(DRG)の局在で有意差を認めた.
結語:血腫やscrew逸脱など他の因子が否定された場合には,術後下肢神経痛の原因としてDRGへの術中刺激の可能性がある.長い罹病期間,広い椎間孔,脊柱管狭窄症の合併,DRGの位置がintraspinal typeでは術後下肢神経痛が生じる可能性が高く注意を要する.