Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
14 巻, 1 号
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Editorial
原著
  • 田中 裕貴, 澤上 公彦, 庄司 寛和, 石川 誠一, 瀬川 博之
    2023 年 14 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:テリパラチド(TPTD)は投与後早期から強力な骨形成促進作用を発揮するため骨粗鬆症を有する脊椎疾患患者に対する治療薬として応用されつつある.本研究の目的は,腰椎後方椎体間固定術を施行した骨粗鬆症患者におけるTPTDの椎弓根および椎体皮質骨に及ぼす効果を明らかにすることである.

    対象と方法:2012年から2017年に当院で腰椎後方椎体間固定術を施行した骨粗鬆症患者34症例を対象とした.テリパラチド(TPTD)を2年間投与した21例(TPTD群)と非投与13例(NTC群)において,術直後,術後1年,術後2年における固定上位隣接椎体の椎弓根・椎体皮質骨面積,椎弓根径の変化をCTにて解析し後方視的に比較検討した.

    結果:TPTD群では椎弓根・椎体皮質骨面積がいずれも増加し,術後1年および術後2年で有意に増加していた.椎弓根外径は長径・短径いずれも増加を認めなかった.一方,NTC群ではいずれも経時的な変化を認めなかった.

    結語:TPTDは椎弓根および椎体皮質骨に対して骨形成促進作用を示し,皮質骨量を増加させる事が示唆された.

  • 田中 真砂史, 石部 達也, 増田 尚也, 高橋 忍
    2023 年 14 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰仙椎部を含む多椎間後方椎体間固定において,S2仙骨翼螺子を追加挿入する事でL5-S1間骨癒合が向上するかを検証した.

    対象と方法:2011年から10年間に行われた初回L4-S1 2椎間経椎間孔的腰椎椎体間固定術(TLIF)のうち,術後1年以上経過観察できた70症例を対象とした.S2仙骨翼螺子を追加挿入した群(S2群)42例としなかった群(S1群)28例に分け,性別,年齢,Body Mass Index,手術時間,出血量,術前・最終観察時単純X線写真機能写L4/5角・L5/S1角及び腰痛疾患JOAスコア,術前傍脊柱筋脂肪化面積,最終観察時ケージ周囲骨架橋及びケージ沈下,再手術の有無を調査した.

    結果:最終観察時のL4/5角,L5/S1角前後屈時の差はS2群が有意に小さく,L5-S1間の骨癒合率はS2群で有意に高かった.JOA score改善率はS2群が有意に高く,再手術率はS2群で有意に低かった.男女比,手術時間,出血量,ケージ沈下,傍脊柱筋脂肪化面積は両群間に有意差はなかった.

    結語:L4-S1 TLIFにおいて,S2仙骨翼螺子追加設置はL5-S1骨癒合に有利である.

  • 松原 庸勝, 佐藤 公昭, 山田 圭, 横須賀 公章, 吉田 龍弘, 永田 見生
    2023 年 14 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:我々は化膿性脊椎炎に対して一貫して経皮的病巣掻爬ドレナージ(Percutaneous Suction Aspiration and Drainage;PSAD)を施行してきた.これまでにPSADを行った症例を調査し,当術式の有効性と限界を考察した.

    対象と方法:2000年から2017年までに我々の施設でPSADを施行した93例を後ろ向きに調査した.初回PSADの臨床成績をModified MacNab criteriaを用いて評価し,再手術を必要とした症例については要因,臨床成績を調査した.

    結果:臨床成績はExcxellent25例,Good34例,Fair13例,Poor21例であった.再手術症例は17例,要因は再発4例,非鎮静化8例,不安定性の出現5例であった.再手術後の臨床成績はExcellent1例,Good4例,Fair8例,Poor4例であった.

    結語:化膿性脊椎炎に対して直接膿瘍をドレナージできるPSADは感染の制御に有効と考える.しかし再発や感染の制圧が困難な症例には再手術が必要であるため慎重な経過観察が必要である.

  • 上原 将志, 池上 章太, 常田 亮介, 西村 輝, 酒井 典子, 堀内 博志, 加藤 博之, 高橋 淳
    2023 年 14 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:びまん性特発性骨増殖症(DISH)を有すると脊椎が骨性に架橋され,脊椎の可動性が低下することから,いくつかの研究においてDISHと身体機能との関連について述べられているが,一定の見解が得られていない.本研究の目的は,一般中高齢者集団におけるDISHと身体機能との関連について検討することである.

    対象と方法:住民台帳から無作為に抽出された候補者を,各年齢層ごと男女それぞれ約50人ずつ選出し,合計411名が対象となった.全脊椎側面X線像撮影および運動機能評価を行った.DISH群と非DISH群に分け,運動機能を比較検討した.

    結果:DISHは66名(16.1%)に認めた.各年代,性別ごとに評価を行うと,立ち上がりテストの60歳代男性と全年代男性,2ステップテストの80歳代男性と全年代男性においてDISH群が有意に低かった.ロコモ25は全年代男性において,DISH群が有意に高かった.また,多変量解析の結果,DISHは立ち上がりテストと2ステップテストの低い結果と有意な関連があった.

    結語:一般中高齢者集団において,DISHの存在が身体機能テストの低い結果と関連があることが示唆された.

  • 瀬上 和之, 高橋 秀, 矢倉 一道, 神崎 浩二
    2023 年 14 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人におけるL5腰椎分離すべり症の術後に一過性に神経痛悪化を認めることがある.本研究の目的はL5腰椎分離すべり症術後の神経根への手術操作が原因と考えられる神経症状の特徴と発生に関わる因子を検討することである.

    対象と方法:Meyerding 2度以内のL5腰椎分離すべり症に対して手術をおこなった18例を対象とした.男性16例,女性2例,平均年齢は61.3歳で術後に一過性の神経痛の悪化を認めた5例(P群)と認めなかった13例(N群)について年齢,性別,罹病期間,術前JOA score,画像所見,手術方法,手術時間,出血量について比較検討をおこなった.

    結果:疼痛はL5神経根支配領域に限局し体動時痛で経時的な悪化はなかった.2群間比較では罹病期間,椎間孔高,脊柱管狭窄の合併,後根神経節(DRG)の局在で有意差を認めた.

    結語:血腫やscrew逸脱など他の因子が否定された場合には,術後下肢神経痛の原因としてDRGへの術中刺激の可能性がある.長い罹病期間,広い椎間孔,脊柱管狭窄症の合併,DRGの位置がintraspinal typeでは術後下肢神経痛が生じる可能性が高く注意を要する.

  • 植田 昌敬, 廣瀬 友彦, 生熊 久敬
    2023 年 14 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:当院では頚椎の様々な病態に対し,ハイブリッド手術室を利用し,さらにガイドワイヤーを併用して,頚椎椎弓根スクリュー(CPS)を挿入している.今回,その経験につき若干の文献的考察を含め報告する.

    対象と方法:2018年から2021年に頚椎後方固定術を施行した25例(男性15例,女性10例,平均年齢73.2歳),合計110本のCPSを対象とし後ろ向きに調査検討した.

    手術方法:まず,ナビゲーション下に,ガイドワイヤーを目標の軌道上に約1 cm刺入し,3D透視画像で深度および軌道を確認する.確認後,更に約1 cm進め椎体内に到達させる.そして,ドリリングおよびCPS挿入を,このガイドワイヤーを通じ行う.術後CT画像を用いて,スクリュー逸脱度をNeoらの分類により評価した.Grade 2または3を臨床的逸脱と定義した.

    結果:臨床的逸脱は1本(0.9%)に認められたが,これに関連した合併症は認められなかった.また,術中3D透視画像取得回数は3.6回であったが,患者1名あたりの術中被曝量は許容範囲内と考えられた.

    結語:本法は,術中患者被曝の点で改良の余地があるが,より正確なCPS挿入を実現できる有用な方法である.

  • 東 莞爾, 田辺 博宣, 荒武 正人, 藤井 淳平, 稲葉 裕
    2023 年 14 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
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    はじめに:腰椎変性側弯症(degenetive lumbar scoliosis:DLS)患者では大腿骨頚部骨密度(bone mineral density;BMD)の非対称性を生じうると考えられる.本研究ではDLS患者における両大腿骨頚部BMD値と脊柱冠状面パラメータの関連を検討した.

    対象と方法:50歳以上の女性で,腰椎Cobb角≧20°を有し,かつ神経症状が見られないDLS患者31例を対象とした.EOSを用いて立位全脊柱X線正面像を撮影し脊柱冠状面パラメータを計測した.Dual energy X-ray absorption(DEXA)法を用いて両大腿骨頚部BMD値を測定し大腿骨頚部BMD値の左右比と各脊柱冠状面パラメータとの相関を調査した.

    結果:Coronal balanceは大腿骨頚部BMD左右比と有意な相関を認めたが(r=0.501,p=0.004),他のパラメータは相関を認めなかった.

    結語:DLS患者では冠状面バランスが偏位すると反対側の大腿骨頚部BMD値が高値を示す傾向があった.偏位の大きい側弯を有する症例では大腿骨頚部BMD値の左右差を念頭に入れるべきである.

  • 金澤 慶, 遠藤 健司, 粟飯原 孝人, 鈴木 秀和, 西村 浩輔, 小西 隆允, 澤地 恭昇, 山本 謙吾
    2023 年 14 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎椎間板ヘルニア(LDH)に対するコンドリアーゼの適応は後縦靭帯下脱出型であるが,後縦靭帯の穿破についてMRIで鑑別することが困難な症例が存在する.今回,ヘルニア脱出形態を椎間板高位によりextruding typeとmigrating typeに分類し(Komoriらの分類),コンドリアーゼの治療効果を比較検討した.

    対象と方法:対象はLDHに対し椎間板内酵素注入療法を施行した26例で,extruding typeは17例,migrating typeは9例であった.下肢痛と腰痛のVAS,MRIによるヘルニアの脊柱管占拠率,ヘルニア脱出面積,椎間板高減少率を評価項目とし術前と術後3ヶ月で比較検討した.

    結果:Migrating typeは,extruding typeに比較して,術後3ヶ月における下肢痛改善率,腰痛改善率,脱出面積改善率は有意に低かった.Migrating typeにおける有効群は4例,無効群は5例であり有効群では全例でMRI T2強調画像において,脱出したヘルニアに髄核と同様な高輝度変化を示し,無効群では5例中4例でMRI T2強調画像において,低輝度を呈していた.

    結語:Migrating typeは,extruding typeに比較して臨床成績は劣っていたが,脱出したヘルニア内部のMRI T2強調画像において,ヘルニアに高輝度を示す場合には,効果を示す可能性が示された.

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