2023 年 14 巻 4 号 p. 710-715
はじめに:本研究の目的は,当院における脊髄硬膜外血腫(以下SSEH)の治療,経過について後ろ向きに調査し,適切な治療法,特徴を検討することにある.
対象と方法:2014年1月から2021年9月にSSEHの診断にて当院で治療された10名を対象とした.除圧術が施行された群を手術群(6名),保存的に経過が見られた群を保存群(4名)とし,2群について比較,検討した.
結果:患者は男性4名,女性6名.平均年齢は71.2歳(62~84歳)であった.保存群は発症早期に症状の改善を認めていたが,手術群では改善を認めなかった.3名が透析患者であり,2名が手術群であった.3名に抗血栓薬内服歴を認めた.胸椎発症を2例に認め,5名で脊髄髄内輝度変化を認めた.これらはすべて手術群においてみられた.保存群は全例早期に歩行可能となり,手術群は4名(67%)で歩行可能となった.歩行不能の2名は透析患者だった.
結語:発症早期に改善を認めない場合は手術加療が望ましい.抗血栓薬,胸椎発症,脊髄髄内輝度変化,また透析歴のある場合は特に注意が必要である.