Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
14 巻, 4 号
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Editorial
原著
  • 井上 太郎, 吉原 永武
    2023 年 14 巻 4 号 p. 710-715
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は,当院における脊髄硬膜外血腫(以下SSEH)の治療,経過について後ろ向きに調査し,適切な治療法,特徴を検討することにある.

    対象と方法:2014年1月から2021年9月にSSEHの診断にて当院で治療された10名を対象とした.除圧術が施行された群を手術群(6名),保存的に経過が見られた群を保存群(4名)とし,2群について比較,検討した.

    結果:患者は男性4名,女性6名.平均年齢は71.2歳(62~84歳)であった.保存群は発症早期に症状の改善を認めていたが,手術群では改善を認めなかった.3名が透析患者であり,2名が手術群であった.3名に抗血栓薬内服歴を認めた.胸椎発症を2例に認め,5名で脊髄髄内輝度変化を認めた.これらはすべて手術群においてみられた.保存群は全例早期に歩行可能となり,手術群は4名(67%)で歩行可能となった.歩行不能の2名は透析患者だった.

    結語:発症早期に改善を認めない場合は手術加療が望ましい.抗血栓薬,胸椎発症,脊髄髄内輝度変化,また透析歴のある場合は特に注意が必要である.

  • 小林 和克, 佐藤 公治, 安藤 智洋
    2023 年 14 巻 4 号 p. 716-721
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    2001~2020年に行ったリウマチ患者を対象とした脊椎手術87名(男性13名/女性74名,平均69.5歳(46~89歳))を検討した.主な病変は頚椎28例,胸椎1例,腰椎58例であった.主な推移は,2011~20年では(2001~10年と比して),年齢(65.6歳/71.7歳)および腰椎手術(38%/89%)が有意に多く,環軸椎亜脱臼を伴う固定術(26例)は,有意に減少していた(88%/12%)(p<0.05).2011年以降の手術では,MTXあるいは生物製剤使用が87%(41例/47例)を占めていた.インプラント使用時の再手術率は23%(18例/77例)で,THA/TKA歴のある場合の再手術率は有意に高かった(46%/17%,p<0.05).7例(8%)に術後感染,2例(2%)に術後1年以内の死亡(うち入院中1例)をみとめた.近年,生物製剤の導入によりリウマチ頚椎病変による固定手術が著しく減少し,非リウマチ患者と同様に腰椎変性疾患が大半を占めるようになった.一方で再手術率は大関節置換を行っていた場合には有意に高く,特に慎重なフォローを要する.

  • 小倉 啓介, 神原 俊輔, 片山 良仁, 松本 智宏, 松本 太郎, 伊藤 圭吾
    2023 年 14 巻 4 号 p. 722-726
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    非骨傷性頚髄損傷患者の損傷脊髄の経時的変化と治療成績の関連性についての報告はない.当院で加療した非骨傷性頚髄損傷患者のうち,受傷直後および受傷後1ヶ月以内にMRIを撮影した19例(保存群5例,手術群14例,平均年齢68.0歳)の損傷部脊髄横断面積の変化を検討した.脊髄損傷高位はC3-4:9例,C4-5:6例,C5-6:3例,C6-7:1例であった.なお,手術は受傷2週以降に行われ,術直前にDelayed MRIを撮影した.損傷部脊髄横断面積の平均減少率,the American Spinal Injury Association(ASIA)motor scoreの改善点数は保存群:86.0%,11.8点,手術群:85.4%,10.6点で両群間に有意な差を認めなかったが,両群で同程度の脊髄面積の縮小が認められた.Delayed MRIにより,急性期の脊髄浮腫の改善を多くの症例で認めたことから,Delayed MRIは脊髄浮腫の改善による脊髄圧迫の減少を確認できる重要な評価方法の一つとなり得る.

  • 井上 太郎, 吉原 永武
    2023 年 14 巻 4 号 p. 727-732
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:近年,脊髄損傷患者は世界的に高齢化している.本研究の目的は,骨傷を伴う高齢頚髄損傷患者の入院中転帰,特に入院中死亡について後ろ向きに調査し,詳細を検討することにある.

    対象と方法:2012年1月から2021年12月の間に当院で治療された65歳以上の骨傷を伴う頚髄損傷患者38名を対象とした.平均年齢は76歳,性別は男性27名,女性11名だった.手術加療が施行された患者を手術群(24名),施行されなかった患者を保存群(14名)に分類し,2群について比較検討した.

    結果:保存群で有意にFrankel Aの患者が多くみられた.全体で11名(28.9%)が入院中に死亡した.うち手術群で2名(8.3%),保存群が9名(64.2%)であり,保存群で有意に死亡率が高かった.Frankel Aの患者において手術群で多く気管切開を施行されている傾向にあった(p=0.07).Frankel A,Bの患者において手術群で経管栄養がより多く施行されている傾向にあった(p=0.05).Frankel A,Bの患者では手術群の81.8%に呼吸補助ないしは経管栄養が施行され,保存群では70%が死亡していた.

    結論:重度麻痺を伴う高齢脊髄損傷患者はこれらの結果を踏まえ早期から患者,家族に情報共有と意思確認が必要である.

症例報告
  • 舘 寛人, 大田 恭太郎, 辻 太一
    2023 年 14 巻 4 号 p. 733-738
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脳性麻痺に伴う脊柱側弯症に対し側弯矯正固定術を行った.手術の至適時期について検討したので報告する.

    症例:14歳男児,混合型脳性麻痺.幼少期より側弯を指摘され小児病院で経過をみられていたが側弯進行し当院紹介となった.ADLは足漕ぎ車椅子を自走し,10 m程度歩行可能,GMFCS level IIIであった.初診時main curve 52°の側弯を認めたが骨盤傾斜はなかった.今後の悪化を懸念し早期の手術を予定したが手術待機中20°以上の側弯進行と10°の骨盤傾斜を生じた.本症例に対し骨盤固定を回避し手術を行った.術後はADLの悪化はなく,現在のところ経過良好である.

    結語:初診の段階で骨盤傾斜がなくても早期に進行してくる可能性を考え,手術を計画する場合は可及的速やかに計画をする必要がある.

  • 大里 倫之, 川上 紀明, 斎藤 敏樹
    2023 年 14 巻 4 号 p. 739-744
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

    5p欠失症候群(以前は猫なき症候群と称されていた)は第5番染色体短腕欠損により生じる常染色体異常疾患で50,000人に1人と報告されている.猫に似た鳴き声や精神発達遅滞,特異的顔貌などの特徴的所見に加え側弯も臨床上の問題となるが,その治療方法とその効果は程度により差がありまとまった報告は少ない.文献的には本疾患に合併した症候群性側弯症に対し手術治療を行った症例報告は少数散見されるが,装具療法や矯正ギプスなどの保存治療を行った報告は無い.我々は,5p欠失症候群を合併した3例の側弯症患者を経験したが,そのうち2例は手術治療,1例は保存治療で治療した.5p欠失症候群に伴う症候群性側弯症は自然経過として経時的に増悪進行しやすく注意深く経過観察する必要があり,悪化症例に対してはその程度に応じて適切な治療選択をする必要がある.また長期的な報告例は皆無であり,今後の長期的な経過観察も必要である.

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