はじめに:近年,脊髄損傷患者は世界的に高齢化している.本研究の目的は,骨傷を伴う高齢頚髄損傷患者の入院中転帰,特に入院中死亡について後ろ向きに調査し,詳細を検討することにある.
対象と方法:2012年1月から2021年12月の間に当院で治療された65歳以上の骨傷を伴う頚髄損傷患者38名を対象とした.平均年齢は76歳,性別は男性27名,女性11名だった.手術加療が施行された患者を手術群(24名),施行されなかった患者を保存群(14名)に分類し,2群について比較検討した.
結果:保存群で有意にFrankel Aの患者が多くみられた.全体で11名(28.9%)が入院中に死亡した.うち手術群で2名(8.3%),保存群が9名(64.2%)であり,保存群で有意に死亡率が高かった.Frankel Aの患者において手術群で多く気管切開を施行されている傾向にあった(p=0.07).Frankel A,Bの患者において手術群で経管栄養がより多く施行されている傾向にあった(p=0.05).Frankel A,Bの患者では手術群の81.8%に呼吸補助ないしは経管栄養が施行され,保存群では70%が死亡していた.
結論:重度麻痺を伴う高齢脊髄損傷患者はこれらの結果を踏まえ早期から患者,家族に情報共有と意思確認が必要である.
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