2023 年 14 巻 4 号 p. 739-744
5p欠失症候群(以前は猫なき症候群と称されていた)は第5番染色体短腕欠損により生じる常染色体異常疾患で50,000人に1人と報告されている.猫に似た鳴き声や精神発達遅滞,特異的顔貌などの特徴的所見に加え側弯も臨床上の問題となるが,その治療方法とその効果は程度により差がありまとまった報告は少ない.文献的には本疾患に合併した症候群性側弯症に対し手術治療を行った症例報告は少数散見されるが,装具療法や矯正ギプスなどの保存治療を行った報告は無い.我々は,5p欠失症候群を合併した3例の側弯症患者を経験したが,そのうち2例は手術治療,1例は保存治療で治療した.5p欠失症候群に伴う症候群性側弯症は自然経過として経時的に増悪進行しやすく注意深く経過観察する必要があり,悪化症例に対してはその程度に応じて適切な治療選択をする必要がある.また長期的な報告例は皆無であり,今後の長期的な経過観察も必要である.