Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
原著
高齢者の慢性腰痛における難治性に関わる因子の検討
酒井 義人若尾 典充松井 寛樹長田 直祥渡邉 剛金子 怜奈渡辺 研
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キーワード: 慢性腰痛症, 高齢者, 難治性
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2023 年 14 巻 6 号 p. 884-890

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抄録

はじめに:高齢者における慢性腰痛の予後と経過については医学的エビデンスに乏しい.本研究では高齢者慢性疼痛の病態解明と治療法の開発を目的としたプロジェクトから慢性腰痛に関する縦断データを利用し,非特異的慢性腰痛患者における難治性に寄与する因子を解析した.

対象と方法:65歳以上の3ヶ月以上持続する慢性腰痛患者341例(平均78.5歳,男133例,女208例)に対して,1年間の縦断的評価を行った.外来診療で運動療法,薬物療法など行い,Visual analogue scale(VAS)が3 cm未満に改善したものを改善群とし,多変量解析を行い腰痛改善に影響する因子について評価した.

結果:1年以内にVASが3 cm未満となった改善群は141例(41.3%)であり,非改善群では有意に罹病期間が長く,薬物投与の割合が多く認められ,治療前のVASが高値であり,四肢骨格筋量が有意に低値であり,赤血球容積分布幅(RDW)が有意に高値であった.2群間の比較でp<0.1であった因子に年齢,性別を加えて説明変数としたロジスティック回帰分析では,VAS,RDW,L4/5高位の体幹筋断面積が有意な因子であった.

結語:慢性腰痛では体幹筋を維持することで腰痛の改善が期待できる一方で,非改善群で老化を反映するとされるRDWが高値であったことは,高齢者の慢性腰痛における非可逆的な側面が示唆される結果であった.

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© 2023 Journal of Spine Research編集委員会
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